農協との「30年戦争」
岡本重明
(文春新書)
筆者は現役の農家。「脱農協」で年商1億円(利益率も高い)は、あたりまえを通した結果。
あたりまえをさせない世界。それが戦後農政だった。
「農業は遊びでも慈善事業でもない。れっきとしたビジネスであり、コスト意識が重要」
タイトルをみると、よくある権力批判とか、強者への反駁とかそんなイメージを受けるが、
その内容は、苦しいながらも成功を収めた者の生のエピソードであり、現に実践中であるから説得力がある。
しかも、独りよがりでない、同じようなことをいう有識者や経済界の大物も実は多い。
農協は今や単なる金融機関。これはもはや反論の余地のない共通認識と言ってよい。
中には先進的で補助金に頼らないような農協もできているというが、「日の丸体質」はなかなか抜けない。
個人が、企業が、担い手が、本当に必要な場所で必要な農業を営むことができるようにするにはどうするのか。
多くの農協はそのような視点はない。
かの政権と同じ。一度壊してみるしかないのだろう。あるいは志のある者が中から改革するか。
備忘メモ
●農協の「ホワイトカラー」は農業を知らない財界人となりはてた者すらいる。
●各地農協(JA)の上に「JA経済連」があり、販売資材担当。
●指導監督組織として、「JA全中」、「JA全農」がある。
●金融資産は各地JAから「JA信連」に流れ、さらに悪名名高き「農林中金」で「投資運用」される。
これがサブプライムに手を出し、本来つぶれる農林中金を、全国各地域のJA信金が「上納金」を巻き上げられて生き延びた。
●農協を通した資材購入の方が帰って割高。政府の補助金のマージン目当ての農協にコスト経営意識は低い。単独で中古購入するほうが遥かに安価。農協と業者と政治の癒着こそ戦後農政。
●農協の独占禁止法違反はかなり事例が集積されている。
●個人のアイディアを農協が盗み、政府から補助金をせしめる事例すらある。
●農家自身も悪い。B/SやP/Lが何のことか分からない。どんぶり勘定でコスト意識がない。農協も農家が政府から補助金さえ受ければ、下請けとして農協が入り込み、JAバンクも潤うのでコスト意識をもたない。
●農家のコストの殆どは「減価償却費」である。戸別補償による差額補填に何の意味があるというのか。
●補助金窓口は昔は農協くらいしかなかった。補助金つき低利融資をうけると利子補給を得るのはJAバンクである。
●耕作放棄地がなくならないのは、耕作放棄地を保有することにコストがかからないからだ。農地だからと優遇される。放棄地を持つことに課税してもよいくらいだ。あわよくば転売などと考えず、担い手に対し農地を解放すべきだ。
●輸出の必要性。海外で評価されるものと国内で「良いとされているもの」とは違う。硝酸態窒素問題を消費者も知るべき。
●日本の自然、日本の高技術、日本の歴史と風土。これを輸出する。
●戦後農政は価格安定の美名のもとに農家の固定経費(減価償却、施設維持)を増大させた。コストがかかる体質にした。これからは担い手に集約するしかない。数(選挙の票田)の理論だけで兼業農家の言うことばかり聞いているのでは先に進まない。
●貿易実務に対する規制を見直し検疫を簡素に。
●損益分岐点をしっかり見極める。
●川下から川上までお金を還流させる仕組み。例えば「場所文化フォーラム」。
●身体障害のある方も農業ができる「NPO気分爽快」