ピカピカと机の上で携帯が光っている。

マナの机だ。

夕方。友達だろうか?クミもさして気には留めない。

「クミ先生、タオルあった?」

「はい、ありました。これです、どうぞ」

先輩に促され、すぐに自分の仕事に戻る。

保育園の仕事など、日中に自分の机に向えるのは連絡帳を書くお昼寝くらいで他は稀。

クミはマナの携帯のこともすぐに忘れた。

「クミせんせー、ばいばーい」

ちらほらと迎えの母親がやってくる時間。

保育園が昼間とは違った忙しさになる。

「ソラくん、ちょっと風邪気味じゃないですかね。お鼻も出てるし」

「いやだわ。インフルエンザも流行ってるし・・・困るわね」

「園でも手洗いうがいはさせていますが、お家でも気をつけてあげてください」

「先生、保育園の閉鎖だけはやめてね。私たちまで仕事休まないといけなくなったら・・・」

働く母親も切実である。

太陽保育園でもちらほらインフルエンザの子が出ている。

学級閉鎖などになっては、母親達は働くことが出来なくなる。

母親達と同じような会話を繰り返しながら、クミとマナは声を掛け合う暇も無く次々とこども達を引き渡していく。

気がつけば19時を回っていた。

「ふぅ。疲れた。でも今日は割りとお母さんたち早かったね」

「珍しくこの時間で全員帰ってるもんね」

そこへ園長のケンジがやってきた。

「どう?二人、今日は早く帰れそうだし、木屋町の“パッション”でも行かないかい?」

「いいですね!マリ子さんのところですか」

二人の顔が明るくなった。

「あ」

クミがはっとした。

「そういえば、昼間マナちゃんの携帯光ってたけど見た?もしかしたら友達からお誘いじゃない?」

「え?全然見てなかった」

マナは机の上の携帯を手にとって開いた。

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「んだよ!触るな」

ナナが叫ぶ。

「足、押さえろ」

片方の男が指示を出した。

もう一人の男がナナの足を押さえる。

「放せっ」

ナナは足をバタつかせようとするが、動けない。

握り締めていたバッグは背中の下にある。ファスナーをあけ、手探りで電源を入れた。

「おい、何やってる?」

足を押さえている男がナナの動きに気付いた。

「こいつ、まだ携帯持ってたのか」

バッグごと携帯を奪われた。

バシッ。頬を殴られる。

一瞬めまいがした。

取り上げられる直前、リダイヤルと通話が押せたかわからない。

押せていれば姉のマナに着信が行っているはずだ。

「こいつ・・・あれだけ携帯を回収するといったのに」

苦々しい顔で、男が携帯の電源を落とし、壁に投げつけた。

心配性のマナのことだ。

再び掛けてきて、繋がらないとしたら・・・何らかの行動には出てくれるだろう。

後はこの男たちから自分をどう守るか。

ナナは必死で考えを巡らせた。

「ちょっとぉ。寄ってたかって、か弱い女の子にそれはないんじゃない?」

男二人は聞きなれない声に驚いて振り向いた。

「誰だ!」

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どうしたものか。鹿山はZRXをUターンさせながら考えた。

あれ以上しつこく訊くのは得策ではない。

仕方なくずるずるとZRXを押しながら、旅館の裏手に回る。

山の中に立っていることもあり、緩やかな上り坂だ。

ZRXの重みが辛くなり、鹿山は路肩にZRXを停めた。

ぐるりと高い塀が旅館を囲む。

そしてその裏には木が生い茂っていて、外からは容易に建物は見えない。

鹿山は躊躇無くZRXのシートに上ると、塀の瓦を掴んだ。

「よっ・・・と」

スクープのためならどんなことでもするライター根性。

こんな時に役立ってもなあ。心の中で苦笑する。

慣れた手つきで、瓦の上から木に乗り移ると、するするとしたに降りた。

大きな庭園の向こうに廊下とガラス戸が見える。

鹿山は辺りを気にしながら廊下に近付いた。

中に入るのはもう暫く後だ。

足元に気をつけながら、建物に沿って歩く。

ミシ・・・。

鹿山ははっと顔を上げた。自分が何かを踏んだのかと思った。が、それは壁のきしんだ音だった。

「?」

気のせいか。でも念のため耳を澄ます。

ギシ。

やはり何かが軋む音。

なんだ?

鹿山は注意深く壁に耳をつけた。

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