兎に角走れるところまで走ろう。

ナナは裏庭から表に出た。

後ろ手に繋がれた手錠が疎ましい。

まだ中から追っ手が来ないことを確認すると、ナナは公道に出て走り出した。

走りにくい・・・。

靴下からアスファルトの冷たさが凍みてくる。

何処に向えばいい?

そう考えながらも、足を前へ前へ出す。

近隣の住民の家に駆け込むか、その前に交番が見つかれば。

その頃鹿山は男二人とにらみ合っていた。

「お前のせいで小娘が1人逃げた」

「そりゃー、お宅らが悪いことしてるんだから。女の子の味方するのは当然でしょ」

鹿山のふざけた口調に二人が眉をしかめる。

三人の声を聞きつけて、数人仲居もやってきた。

「ここは宿泊者以外入室禁止ですよ!」

先ほど応対に出た仲居が鹿山に向って叫ぶ。

「さっき貴女、宿泊者はいないっていってたよねえ。この二人は何?」

飄々とした表情で鹿山が尋ねる。

「お泊りでもない方にお答えすることはありません」

仲居はきっぱりと言い放った。

「出ていってください。さもなくば、警察を呼びますよ?!」

「警察を呼ばれて困るのはどっちかなあ?」

鹿山は二人の男と仲居たちを見ながら言う。

「俺は全然困らないぜ。悪いことをしているつもりもないしね。女の子をよってたかって暴行しようとしてるあんたらの方がよっぽど困るんじゃないの」

早く逃げろ。もっと遠くへ。

鹿山はそう念じながら、なるべく時間を稼ぐように努めた。

先ほどの少女が出来るだけ遠くに逃げられるように。


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「ナナ、大丈夫かな」

6箇所目のパワースポットを“見学”している時に、サヤがミーナに呟いた。

「うん・・・宿につれて帰られただけでしょ・・・?大丈夫だよ、きっと」

ミーナ自身、このツアーについては半信半疑のところもあるが、やはり大金を積んで参加している以上、それなりの成果は期待したい。

だからケイの言葉に賛同してしまったが、初めからナナがあまり乗り気でなかったのもわかっていた。

なのに、サヤを煽るような言い方をしてしまった軽率な行動をやや悔やんだ。

「だといいんだけど」

サヤはしょぼんとしながら、“ご神木”と説明された木を撫でた。

なんの変哲も無い、ただの山に生えている木。

これのどこにパワーが宿っているというのだろう。

それを感じられない自分は、このツアーに来た意味があるのだろうか。

ナナは無事だろうが、恐らくまた、帰ってから暫く関係がギクシャクするのは目に見えている。

サヤはため息をついた。

ナナとの関係を悪化させてまで、来るべきものだったのか?

サヤは自分の軽率な行動を後悔した。

「・・・見せしめだって、絶対」

「やっぱりちょっとやばくない?」

「あたし、ちょっと恐くなってきた」

木の陰で別な少女3人がひそひそと話している。

サヤは見せしめという言葉で、ナナのことを言われているんだと察した。

慌ててケイとジュリアの姿を探したが、3人からは遠くの場所に居た。

「うちらやっぱり騙されてるのかな?」

「昼食の時の勧誘もすごかったよね」

「まあ、明日の午前中で帰れるし・・・ちゃんと帰れたらもう連絡とかシカトすればいいんじゃない?」

「そだね。でもちゃんと帰れるかな」

「やめてよ、不吉な」

少女達が身震いする。

サヤもその言葉を聞いて、身の毛がよだった。

ちゃんと帰れる・・・?

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「どうやってここに入ってきた?」

男がナナの足を押さえたまま尋ねる。

「それは秘密です!それより、そんなことしちゃいけないんじゃないのー?」

突然の訪問者―鹿山にナナも男たちも呆気に取られていた。

「関係者以外は立ち入り禁止だ、出て行ってもらおう」

ナナを殴った男が鹿山に詰め寄る。

「おおっと。そんなことしたら、こればらまいちゃうよ」

鹿山は携帯をかざした。

そこには男たちがナナを犯そうとしている場面から、こちらを振り向いたところまで、連写されていた。

「お前・・・っ、いつの間に!!」

鹿山から携帯を奪おうとした男が、手をかざした瞬間、鹿山は相手の腹に拳を入れた。

「うっ」

呻いて倒れる男。

「何だ、てめぇ!」

ナナを押さえていた男も鹿山に飛び掛ってくる。

鹿山はひょいと廊下に出た。

男もつられて出てくる。

「オイ、足は大丈夫だろ!逃げろ!」

鹿山が叫んだ。

ナナはその声で我に返った。そして慌てて起き上がると窓に近付いた。

「しまった!」

「おい、待て」

ナナは器用に後ろ手で窓の鍵を開けると表に出た。

慌てて男達が部屋に戻ったが、ナナは既に逃げ出した後だった。

「この野郎・・・どういうつもりだ?!」

ナナのことは諦めて、男が鹿山に詰め寄った。

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