手術当日。
勿論章太郎にも内密だった。
梓には伝わっているのかわからない。
入院の準備は手伝ってくれたが、トキはなんと説明しているのだろう。
「マリ子さん、行きましょうか」
トキがタクシーに荷物を持って乗り込んだ。
マリ子も黙ってそれに従う。
すべてのことに実感がなく、夢の中で物事を見ているような気分になった。
「ではまず麻酔しますからね」
待合室で麻酔をされると、ぼんやりとした頭にいっそう霞がかかったような感覚になる。
「なんか眠いんですけど」
「もう少し待ってて」
看護士が苦笑する。
しかし、マリ子はトキにもたれてうとうとし始めた。
トキもやさしく肩を抱いてくれる。
意識が遠のく中で誰かが話しているのを聞いた。
「いつも申し訳ないです」
「いいえ・・・。でも今度は中学生・・・?」
トキと・・・誰だろう。誰かが話している。
暫くすると、数人の女性の声が聞こえてきた。
「また三上様関係らしいわよ」
「だって中学生じゃない?おかしいんじゃないの、それ」
「犯罪でしょ」
「前は住み込みのお手伝いさんだったじゃない」
「あの子は可哀想だったわよね。廊下で堕ろしたくないって、泣きながら大暴れして」
「あのおばあちゃんも毎度毎度後始末させられて・・・どんな気持ちなのかしら」
わからない。
周りが何を言っているのか。
「はーい、分かります?これから手術室いきますからねー」
誰かが遠くで自分を呼んでいる。
マリ子は夢うつつで、それを聞いていた。