「・・・・っ」
一瞬だった。
高橋が後ろに回り、マリ子の手を取りねじ上げる。
マリ子は冷静を装うが、腕が上がるにつれて唇の端が歪む。
「あんたが得意な調教を今夜はあんたが受ける番だ」
高橋はマリ子の手に手錠を掛けると壁に付いているフックにつないだ。
「サディストはマゾにはなれないのよ」
マリ子が不敵に笑う。
「やってごらんなさい。痛めつければつけるほど、私の怒りを買うだけだから」
「殺しはしないから安心しろ」
「また借金が増えちゃうもんね」
シュッ。
マリ子の顔が横に振れた。
高橋が持っていた真っ黒な革の鞭でマリ子の頬を打ったのだ。
「その減らず口もいつまで叩けるかな」
高橋が再び鞭を振り上げた。
場所は変わって、こちらは鹿山とリョウジ。
烏丸通沿いのビルを調査中だ。
リョウジは仕事柄、有名企業に出向くことが多い。顔も広いし、営業という口実があるので各建物にも入りやすい。
そこで鹿山と組んで、真条グループ企業を調査することになった。
「いやー、あんたが居てくれて心強いよ。レッド・フラワーの名刺があれば大概の会社には入り込めるからね」
「ウチの会社、もう社長じきじきに飛び込み営業をするレベルではないんだけど」
リョウジはぐったりとしながら、つぶやく。
「堅いこと言うなよ!社長じきじきに営業だなんて、なんて誠実な会社だろうって思われるぜ」
「何で俺はこんなことをしているんだろう」
意気揚々と廊下を歩く鹿山の後ろから、リョウジがとぼとぼと付いていく。