「これでよし」
マイはチャック付のポリ袋に吸殻を入れて、口を閉めた。
白いラベルシールに、黒い油性ペンで今日の日付を入れる。
そしてその袋を大切に、引き出しの小分けされた仕切りに収めた。
儀式のような、作業。
白い手袋を外すと、マイはベッドに寝転んだ。
「はぁ。今度はヒロシさん、いつ来てくれるかなあ」
歳に似合わない広さの2LDK。
元は姉のケイと二人で住んでいたマンションの一室。
ケイが結婚して出て行ってから、全て自分の部屋として使っている。
寝室には、3方向の壁にびっしりとダンボール製の引き出し。
全ての表面に歴代の彼氏や好きになった男の名前が、ラベルで分類されている。
そこに収められている物。
先ほどの吸殻のようにゴミといえるようなものから、各自の所有物など。
マイが収集している、“コレクション”の数々。
それを見て、満足する。
「マイ、結婚してても諦めないから」
マイはにっこりと一枚の写真に微笑みかける。
部屋に置いてある写真立ても、数百枚はくだらない。
全てある男---ヒロシの盗撮写真だ。
今、増え続けているのも、ヒロシの名前が書かれた引き出し。
床には一面にゴミ袋とゴミ。
靴を脱ぐのはベッドの上だけ。
唯一片付いているのも、ベッドの上と収集物を保管するための道具が入っているサイドテーブルのみ。
仕事用のワンピース、高級ブランドのカバン、靴、化粧品。全てがゴミ同然におかれた部屋。
「はーぁ。早くヒロシさんと結婚したいなあ」
マイはストッキングをぽいとゴミの中に脱ぎ捨てると、そのまま眠りに落ちた。