【どうする家康】松本潤さんを取り巻く出演者は?静岡で語る見どころ(全文掲載後編)
2022年11月26日に静岡市で開かれた、大河ドラマ「どうする家康」時代考証の静岡大学 小和田哲男名誉教授と、NHK制作統括の磯智明チーフ・プロデューサーによるトークショー。
NHK静岡では2回に分けて内容を(ほぼ)全文掲載しています!
後編ではドラマの見どころや気になる出演者のお話、たっぷり語っています!出演者紹介のリンクもぜひご覧になってください!
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【家康を取り巻く人物を語る!】
司会:ドラマの中で家康を取り巻く多彩な人物が登場すると思いますが、とりわけ注目すべき方は?
磯智明チーフ・プロデューサー:
三河家臣団といわれる家康を支える人物たちは、古沢さんも1人1人のキャラクターを大切にしていて、どの人も魅力的に出てきます。
もちろん酒井忠次だとか、ネタバレになりますけれども、のちに豊臣家に寝返る石川数正。この2人のツートップのキャラクターはとても面白いと思います。
あと井伊直政。物語の中盤から出てきて、家康に生意気なことを言いながらも周りの家臣団にもまれていき、のちに徳川四天王の1人になっていく。注目していただければと思います。
瀬名のあとを引き継いで徳川家の奥方となる於愛の方。秀忠(江戸幕府二代将軍)の母ですけれども、信康事件でどん底に落ちた徳川家の中で、家康にとって一番支えになった人です。
広瀬アリスさんが演じますが、懐が大きくドシンと構えていくような、家康にとっては頼りになる女性、エネルギー源のような感じで描かれていくと思います。
個人的に楽しみにしているのが本多正信という人物。……
今回は割と早い段階で本多正信が登場し、途中で別れ、また再会みたいな。ふたりの関係を丁寧に描こうとしています。
家康が秀吉と渡り合い、秀吉亡きあと関ヶ原で天下を目指していく上で、本多正信のように人生の酸いも甘いも分かり、人間のずるさも理解しているような人物がそばにいたからこそ、家康が天下取りのレースから抜け出し、関ヶ原のような難局も乗り越えていったんじゃないかと想像しています。
小和田哲男さん:
いま話が出た本多正信、これもちょっとネタばらしになっちゃうかもしれませんが、永禄6年から7年にかけての三河一向一揆の時には一揆側で、家康に刃向かった男なんですよね。一度は追放されちゃうわけですが、本多正信の友達だった大久保忠世のあっせんでまた家康のところに戻ってきて、あれだけの活躍をする。
私は「信長と家康の違いは何か」と質問を受けたときに、自分に敵対した者を許すか許さないか、その度量が家康は大きかったんだと。
家康の家臣団、もちろん中核は三河以来の武将ですれども、今川を滅ぼしたときには今川の家臣、武田を滅ぼしたときには武田の家臣、北条を滅ぼしたときには北条の家臣を結構受け入れている。そういう懐の深さが家康のいいところだったんじゃないかなというふうに思っています。
司会:静岡は家康ファミリーの多くが眠るところです。家康の家族は、最後はハッピーエンドになるのでしょうか?
磯プロデューサー:
家康は女性に支えられることが結構多い。家康の真面目で悩んだりするというところを、前向きに引っ張っていったのは女性だと思っています。瀬名も、於愛の方も、人柄は違うんですけれどもそういうタイプの女性として描かれていきますね。
後に登場する阿茶局(あちゃのつぼね)もという人物も家康と共に戦場まで行ったという逸話がある。
家康は秀吉とよく女性の趣味が比べられますが、家康は女性をパートナーとして、人生を支えて寄り添ってくれるような人と巡り会い、一緒になったと思います。
小和田さん:
家康の場合、もちろん最初の正室・築山殿(瀬名)、そのあと朝日姫。それ以外に側室15人ぐらいがいるんですけれども、そうした女性たちに支えられていた側面があると思います。子どもを産むためということではなくて、むしろパートナー、相談役みたいな形で支えられていた側面も強かったんじゃないかという気はしています。
【制作側の2人が語る“見どころ”】
司会:ドラマの見どころは?
磯プロデューサー:
見どころがいっぱいあって…瀬名と信康のくだりは当然ドラマのハイライトになると思います。
ひと山終わった後に信長との話があって、本能寺の変があり、伊賀越えがあり、さらに小牧・長久手の戦いという秀吉との一騎打ちがあります。本当に家康はゆっくり寝たことがないぐらい、次々と色んなことが起きる人なんだなあと思います。そこに至るまでも、三方ヶ原の戦いという大きなヤマ場があります。来年、年明けぐらいから撮影に入っていきますが、そこで立ちはだかる阿部寛さん演じる武田信玄は相当強いです。
とはいえ、ドラマとしては、そこまでシリアスかというとそういう訳ではなく、古沢良太さんが楽しく面白く描いているところがあり、非常に明るいキャラクターの家臣団もいるし、ユーモラスなシーンも一杯入っているので、毎回毎回手に汗握りつつもきちんと楽しめる、エンターテイメントになっているんじゃないかと思います。
古沢さんは子どもの頃に、大河ドラマを日曜の夜8時に家族でわくわくして見た思い出があるそうです。今回の大河も親子、ご家族で見ていただきたいです。
「麒麟がくる」を放送した時に、初めて織田信長を知ったという若い視聴者もいらしたようです。
多分、徳川家康も名前を知っていても、どういう人かは知らない人がかなり多いんじゃないかと。そういう歴史に不慣れな人でも楽しめる、横にお父さんお母さんおじいさんおばあさんがいて頂いて、「家康というのはこういう人だったんだよ」「織田信長はこうだったんだよ」と話しながら、家族でも楽しめるドラマになればいいなと思います。
小和田さん:
まだ脚本が真ん中ぐらいまでしか来ていないので見どころと言っても前半ぐらいしか言えませんが、まず1つは永禄3年の桶狭間の戦い。今川義元が織田信長に負けたときに、家康自身は大高城というお城にいて、なんとか無事に三河に戻ってくるというあたりが一つのヤマ場。その直後、今度は三河一向一揆に翻弄される。
私、前半のヤマ場の1つが、磯さんからも話が出ました元亀3年、1572年の三方ヶ原の戦いだと思います。武田信玄に完膚なきまでにボロボロ負けた、あの戦い。それで家康は強くなっていったという側面もあるので、その辺もどう描かれてくるかがちょっと楽しみなところです。
いずれにしても前半は武田信玄と、その子どもの勝頼。
勝頼というとどうしても多くの方が「武田を滅ぼしちゃったんじゃないの」「大した武将じゃないね」と言いますけれども、意外と家康にとっては手強い相手だったんですよ。それこそお父さん(信玄)が落とせなかった静岡、いま掛川市ですけれども、高天神城を落として。それを家康が取り返すのに7年もかかっている。だから家康も武田親子には翻弄され続けたというのが前半のヤマ場として私は注目しているところです。
【ドラマの軸は「家臣団の結束」】
司会:さらにそのあとに出てくる豊臣秀吉との戦いも大ピンチなのでしょうか?
磯プロデューサー:
小牧・長久手の戦いは秀吉の大軍10万が来て、家康は3万ぐらいかと。そこと勝負として互角に持ち込むわけですから。そもそも家康は相手と対等以上の戦力で戦えたのは関ヶ原以降と言われています。この戦いが面白いのは、家康の家臣団の総力戦みたいな感じになるんですよね。みんな適材適所で、総合力で秀吉軍とどう渡り合うかというのが見どころです。
その後、家康は秀吉に臣下を尽くすことになり、江戸に行く訳ですが、家康の家臣団は地方にみんなバラバラに散って、忠勝は千葉に行き、榊原は群馬に行き、大久保忠世は小田原に。みんなそれぞれ地方都市の原点を作っていくんです。
そして関ヶ原の前になって、家臣団が再結集して、石田三成と雌雄を決していく。家康と家臣団の物語というのはこのドラマの大きな軸になっています。
小和田さん:
徳川家臣団の結束力の強さは、やっぱり「どうする家康」のキモになると思います。今お話の通り、本多忠勝、榊原康政あたりが大活躍をし、そこに若手だった井伊直政が加わってくる。この3人のことを「三傑」という言い方をして。そこに酒井忠次を入れて「徳川四天王」という言い方をします。ただ酒井忠次とほかの3人では年齢差が15ぐらい。親子ぐらいの違いがあるので、この4人を一括して四天王と言っていいのかというと異論がないわけではないんですけれども。
いずれにしてもそう言った武功派武将に支えられ、ある程度世の中が治まってきたときに本多正信のような武将が側近として「相遭(あいあう)こと水魚のごとし」みたいな相談役でうまく出てくる。そういうその場その場、あるいはそのときそのとき、家臣団のそれぞれの個性が家康を支えていったというドラマになっていくんじゃないかと思います。
【「やれやれ」はいつ?】
司会:最後までハラハラドキドキみたいな展開で、どのあたりで「やれやれ家康」とほっとできるのでしょうか。
小和田さん:
「やれやれ」はある程度・・・慶長5年の関ヶ原の戦いで勝った時点では少し「やれやれ」だったと思います。その3年後に征夷大将軍、徳川幕府を開くということで、さらに「やれやれ」。
でもまだ大坂には豊臣がいるということで、最後総仕上げ。これが大坂の陣になって、それを秀忠に任せるんじゃなくて家康が自ら指揮を執って戦いに出かけるというところが、多分自分の息子に汚れ役はさせたくない、最後の総仕上げは俺がやるんだという思いが家康にはあったんじゃないかと思います。
司会:あとのほうでは石田三成や真田信繁(幸村)との渡り合いも見どころになってくるのでしょうか?
磯プロデューサー:
今回の石田三成は相当強いと思います。そんな簡単に家康が勝てるように描く感じではないですね。
司会:「計算尽くで石田三成を誘い出し天下をとった」というような描き方とは、ちょっと違いますか?
磯プロデューサー:
もしかしたら石田三成のほうが頭がいいかもしれない。
小和田さん:
まだ脚本出てきてないからなんとも言えないですね。よく石田三成を悪者みたいに「何で負けると分かっていた戦いを仕掛けたんだ、豊臣家が滅びちゃったじゃないか」という言い方をするのは間違いだと、私は前々から言っています。西軍が軍勢としてはちょっと多い。確か8万4000ぐらい,東軍が7万4000ぐらいですから。
あれだけの軍勢を集めたのは三成さすがだな、すごいなと思っています。脚本の古沢さんとは三成について、ぜひ話してみたいなと思っています。
磯プロデューサー:
小和田先生が監修されている岐阜関ケ原古戦場記念館。そこに足を運んだ時に古沢さんがおっしゃったのは、家康の旗印「厭離穢土 欣求浄土」(おんりえど ごんぐじょうど)、三成の「大一大万大吉」(だいいちだいまんだいきち)を見て、2人の政治理念って割と近いなあということでした。
武田信玄が掲げている「風林火山」とか、織田信長が掲げている「天下布武」は自分を誇示する文言なんです。けれども家康や三成は「みんなで力を合わせて頑張ろう、良い世の中をつくろう」という、精神論や理想論でとても似ているなと。
家康と三成はお互い気質が似ていて、考えていることがわかるだけに、敵対して腹の探り合いになったときには一番やりにくい相手のように家康は感じるんだろうなともおっしゃっていました。まさに一番敵にしたくない相手として、三成は登場する予定です。
【質疑応答】
観客:小和田先生。大河ドラマって同じキャラクターがほかの作品ごとにいろいろ出てきていて、「真田丸」では内野聖陽さんが家康をやっていて、「おんな城主 直虎」では阿部サダヲさんがやって、「麒麟がくる」では風間俊介さん。
それぞれの大河ドラマで、それぞれ異なる家康像を時代考証するのは大変ではないですか。
小和田さん:
歴史研究はどんどん進んでいて、今までの通説や定説で描かれてきた家康と、新しい研究で出てくる家康は違いがあるわけです。そのあたりをドラマでも出していただきたいということは言っています。40年前の山岡荘八原作の家康と、現在の研究がどんどん進んできている家康は当然違うわけですし、今の到達点の家康をできるだけ描いてもらいたいなということは言ってあります。
研究の進展というのは、専門書は本屋さんに行けば売っているわけですが、多くの方はそこまで興味がない。本まで買って勉強したいと言ってくれる人はいない訳です。大河ドラマは多くの人が見てくれる。今の新しい研究状況もドラマを見ればわかるということも、研究者にとっては喜ばしいことです。
古沢さんの台本は、私自身も知らなかったような、あまり気にしていなかったエピソードも取り上げてくれているので。今まで意外と知られていなかった家康の実像が結構描かれるので、見ていて楽しいドラマになるなと思います。いろいろ勉強されているので、外れていないというか、今の研究到達段階に近い家康像が描かれているという印象はあります。
観客:小和田先生に質問です。家康は瀬名姫を殺さないといけないとなった時に、何を一番に考えて踏み切ったのでしょうか。
小和田さん:
それはなかなか難しい質問ですね。ドラマでどう描かれるかはわかりませんけれども、瀬名が産んだ長男の信康が織田信長の娘と結婚していて、娘の方から夫の不行跡を、あるいは瀬名・築山殿の不行跡を信長に密告していて、信長から(家康に)殺せと命令が来たというのが通説でした。
最近の説では信長が2人を殺せと言っていなくて、むしろ家康の判断だということです。これはやはり家康としては徳川家臣団を解体させたくない、信康がどちらかというと家康と意見の違いが出てきたりして、ある意味ではしかたなく殺したという判断だと思います。それ以上言うとネタバレになっちゃうのでごめんなさい(会場笑い)。
【終了後 控え室でのコメント】
磯智明プロデューサー
(Q静岡の方の期待をどう感じましたか?)
とても熱心に聞いてらっしゃる方やメモを取りながら聞いていらっしゃる方がいて。歴史や家康に対する興味や造詣が深い方が多いんだなと思いました。
(Q浜松や伊豆・東部の方も注目しています。静岡県の方々の期待に応えられそうですか。)
物語の多くは浜松・静岡など、静岡県のエリアが舞台になってきて、馴染みのある地域名がドラマのさまざまなシーンで登場します。三方ヶ原の戦い、高天神城の戦い、ゆくゆくは駿府城も構えます。家康の育ったところであり、成長を遂げた場として、この土地は出てくると思います。静岡県の皆さんが、地元の歴史を振り返ったり、地域を見つめ直したりするきっかけに、このドラマがなればいいなと思います。
(Q県民の期待に存分に応えられるドラマになりますか?)
喜んでもらえるドラマにしなきゃいけないなと今日改めて思いました。
小和田哲男さん
(Q先生も脚本を少しずつご覧になっていると思いますが、ドキドキされていますか?)
そうですね。エピソードで私自身も知らなかったようなというか、あまり気にしていなかったエピソードも取り上げてくれているので。今まで意外と知られていなかった家康の実の姿というか実像ですね、これが結構描かれるので、見ていて楽しいドラマになるなと思います。
(Q古沢良太さんの家康の捉え方はいかがですか?)
それこそいろいろ勉強されているので、外れていないというか、今の研究到達段階に近い家康像が描かれているという印象はあります。
(Q今川義元復権、まさに小和田先生中心に静岡を挙げて取り組んでこられました。今回のドラマで成就されていますか?)
そうですね。脚本段階では今川義元に育てられた竹千代少年という感じでの2人のコンビ、組み合わせは描かれていますので、それはもう私がずっと言ってきた今川復権。今川義元はどうもお公家さんかぶれでという言われ方の反論にはなると思います。
一昨年、駅前に義元の銅像も出来ました。
今回のドラマで今川義元をきちんと描いてもらえるということで、「え、こういう今川だったの」と多くの人に知ってもらえるいい機会になると思います。