身を切るような寒さから帰ってきた。

ヤレヤレと手を擦りながら、とりあえずの暖を取ろうと台所のストーブに点火する。

凍りついた洗濯物を取り込み、湯船を洗い終わった頃、ストーブにかけたヤカンの湯がコトコト言い始める。

コーヒープレスで抽出した豆の味は嫌いではないのだけれど、粉っぽくなるのと変な酸味が出てくる前に飲まなきゃいけないので、淹れ方に次第ではエスプレッソよりも飲む側に緊張を強いる意味では、せわしない気がする。

我が家では焙煎した豆のまま買い、使うだけ挽くスタイルで淹れている。
ペーパーフィルターにスプーン三杯の細挽きモカ。

しゅんしゅんと音を立てるヤカンからほんの少し、豆を蒸らすためドロップ。またヤカンをストーブに戻し、しばらく待つ。

フィルターから昇る湯気が半減した頃、 肩の高さから湯をとぼとぼ注いで泡を眺めていると、勝手口から物音が。

なぜ今まで気づかなかったのだろうか。


裏手の勝手口がほんの20cm開いている。

物音のする方を、そっと覗く。


ゴソソ、ゴソゴソ。


ふご、ふごっ、ふごふご。


…ウリ坊…

イノシシだ。
今朝収穫した野菜を一心不乱に貪っている。

おのれ。
子供とはいえ不届き千万、とっつかまえて鍋にしてくれるわ。

そっとその場を離れ、スリングショットを持ち出そうと棚を探っていると

ふごっ?


ふご、ふごふご!

スサササササ


…爪先立ちの小刻みなダッシュで逃げられた。



親じゃなくて良かった。