“手短に感想を” | “終末の雨は涙色”改め“再生への風”

“手短に感想を”

 鬱々と気の晴れぬ日々ではあっても暮らしはつづき、食事をしながらドラマを観たりもする。今シーズンは史実の再現かのようにまた明智光秀が信長を討ち取ったという結果になったようだ。ネットでは信長自身に責めがあるように語る向きも多いようだが、それはかなり気の毒という感はある。そういった意味では出演者全員に同情せざる得ないのではないかと私は個人的に思った。実績のある人が書き下ろしたとは信じがたい仕上がりに正直驚いている。企画から制作に至るまでの過程で無理があったのではないかと推察するしかない。残念としか言いようがない。「一体どこのなにが?」というより抽象的になるが、物語の軸や中核となるべきものに十分な重力がかかっていなかったからではないかと個人的には思っている。そういったところでは、主人公と対抗する悪の側に人間的な厚みがあることが不可欠なのだが、そこがかなり弱かったかなという印象は拭えない。だから「嫌いだ!」というセリフがとても浅薄にしか聞えなかったのではないだろうか。どちらにしても制作全般に無理があったのではないかと思う。その点、光秀側は十分な時間をかけて準備し、満を持して世に問うた作品だったようで、『MIU404』を思い起こすようなふくらみをもった見応えのある作品だった。どこまでいっても完璧ではあり得ない法制度や諸機関というものと生々しくも厄介な自然物である人間、齟齬や矛盾や過誤は避けがたい。そこに生まれる深い闇と落とし穴。人間という生き物も社会という営みもその奥底には黒々と禍々しいものを潜ませている。現実にはあり得ない言わばハードなファンタジーだ。だがそこに書き込まれていた人間の格闘の姿は本物だっただろう。血の涙を流した男を演じた主演俳優の成長が嬉しいドラマだった。信長チームには今後への糧としてもらいたものだ。相まみえて敗れた相手から学ぶことは多かったはずだ。今後に期待したい。合掌。