30SECONDS TO MARS インタビュー<後編> | BIRKENHEAD ERKY 旧ブログ 2006~2013
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30 SECONDS TO MARS
 
前回の続きです。
 
BARKS NEWSより
 サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ、来日インタビュー<後編>
 
<サマーソニック2010>に出演のため来日を果たし、短い日本滞在を満喫したサーティー・セカンズ・トゥ・マーズ。「東京で暮らすことになったとしても、何ひとつ困ることはないはずだ」とまで語るメンバーたちの会話が「うどん」や「原宿のクレヨンハウス」にまで及んだ《前編》に続き、今回の《後編》では、まさに現代のマスターピースと呼ぶに相応しい最新アルバム『ディス・イズ・ウォー』と、彼らならではのライヴ・パフォーマンスについて語ってもらった。もちろんそうしたシリアスな話題でも、笑い声が絶えないのがこのバンド。それにつられてこちらが笑っているうちに、真顔で核心発言をしてしまうのがジャレッド・レトという人物だったりもする。

■人生という旅には、実にたくさんの闘いが用意されている。
■ただ、俺はそうした闘いから逃げようとは思わない。

――『ディス・イズ・ウォー』が欧米でリリースされてからすでに半年以上が経過しているわけですが、今でもこのアルバムには満足していますか?
シャノン:もちろん。依然として新しい。いまだに新鮮さは損なわれていないし、今でも誇りに思っているよ。満足感がより大きくなってきた気さえする。

ジャレッド:このアルバムからはすでに、たくさんのギフトをもらってきた。わずか6~7ヵ月間ほどのうちにね。素晴らしい経験をたくさんさせてもらったし、エキサイティングな旅をずっと続けてこられた。このアルバムのおかげでね。

トモ:同感だな。たったこれだけの時間経過のうちに、本当に数多くの素敵な経験を得てきたからね。ただ、いまだに「ライヴでいかにして演奏すべきか」という部分について学習しているようなところもあるんだけども(笑)。ツアー中、プレイしていて毎日のように新しい発見があるんだ。「ああ、ここはライヴではこうしたほうが良かったんだ」みたいなことが常にね。

ジャレッド:それは俺たち全員にとって同じことだと思う。

シャノン:まったくだ。

――アルバムが完成したとき、「素晴らしいものができた!」という興奮と同時に、「これは厄介なことになりそうだぞ」というのもあったんじゃないですか?

トモ:うん(笑)。再現することが大変なのは、最初からわかっていたからね。

――今作は、これまで以上に空間的な広がりを感じさせる作品になっていますよね。それを表現するには何かを足していけばいいというわけではないだろうし、そこがすごく難しいんじゃないかと思うんです。これまでやってきたことだけでは足りないというか、仮にトモが“単なるギタリスト”であったなら成立し得ないというか。

トモ:もしかして、俺のことを責めてる?(笑)でも、アルバムというのはあくまでひとつの作品として、独立したものとして作るべきものだと俺は思う。いわばライヴとはまったく別個のものだよ。スタジオで徹底的に追求しながら構築したものを、ステージ上で完璧に再現するなんて不可能なことだし、それに挑むことがライヴだとは思っていない。だからそこは、違った方法論で臨めばいいと思うんだ。

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――ええ。たとえば何度もライヴで演奏を重ねてきたことによって、あなた方自身のなかでアルバム自体の印象が変わってきたようなところもあるんでしょうか?

ジャレッド:作品自体がより生命を持つようになってきた、と言ったらいいのかな。最大の変化はそこにあると思う。多くのオーディエンスと共有してきたことによって、より生命感のあるものになったというか。実際、このアルバムにはファンの歌声が入っていたりもするわけだけど、それは、言い換えれば彼らがバンドの一員であるのも同然だということ。音楽を共有するうえで、他の大多数のバンドたちの作品以上に、効果的なギヴ・アンド・テイクが成立している。そんな言い方もできるんじゃないかな。今後もそれは続けていきたいと思っているよ。未来について断定的な言い方をするのには無理が伴うこともあるけど、こうした関係性に則ったアプローチはこれからも繰り返していきたい。1曲1曲はショウのために構築されたもの。俺はそう考えているからね。

――すごく具体的なところで言えば、ファンによるコーラス・パートが音源中に存在していることで、観客もあらかじめ、どこを自分たちが歌えばいいかを知っているわけですよね。

ジャレッド:そう。そういった教育的過程はアルバムを聴き込んだところですでに終了しているんだ。

――つまりライヴは、ファンにとっての試験ということ?

ジャレッド:そういうことだ(笑)。

トモ:そして言うまでもなく、日本のオーディエンスは見事にそれをクリアしたってわけ。

――その言葉を聞いてホッとしました(笑)。

ジャレッド:実際、<サマーソニック>のオーディエンスは素晴らしかったよ。同時に、ああいったフェスでは、他のバンド目当てで観に来ている人たちも多いし、このバンドのことをよく知らない人たちもたくさんいる。それはそれで素敵なことだけども、自分たちが本当に最高だと思えるような相互作用が得られる機会では、必ずしもない。自分たちの単独ライヴでは、もっともっとクレイジーなことになるからね。なにしろその場にいるすべてのファンが、いつ、どこで、何をどうすべきかをすべて熟知しているわけだから。
 

――フェスの場合、限られた時間枠のなかに1曲でも多くを詰め込もうとするバンドが多いですよね? しかしあなた方の場合は、むしろそれ以上に「自分たちならではの空気感」を重視していたと思うんです。

ジャレッド:その通り。俺たちは時間ってものの使い方をよくわきまえているんだ(笑)。何曲演奏するかという数の問題じゃない。限られた時間のなかで、どれだけ深い関係を築けるか。そこが鍵だからね。

トモ:まさに。

ジャレッド:だから慌てて何曲も無理矢理詰め込もうとするよりも、じっくりと腰を落ち着けて演奏して、みんなをジャンプさせたり、オーディエンスのなかに飛び込んだり、ファンをステージに上げて通訳させたり(笑)、みんなでステージ上で歌ったりするほうがいい。結果、全体を通じてものすごく印象的な時間になっただろ? 記憶に残るライヴになったと思うんだ。それが何よりも重要なことだと思う。

――ええ。僕自身もそうですけど、オーディエンスの大半はあのステージに触れたことで、フル・サイズのショウを観たいと感じたはずでしょうし。

ジャレッド:そうだろうね。俺自身も観てみたい(笑)。次回は単独公演のために来たいね。願わくば2月頃に。今、それを目論んでいるんだ。

シャノン:冬の日本にはまだ来たことがないし、すごく楽しみだな。

――寒い季節に熱いライヴが観られることを期待しています。ところで改めて『ディス・イズ・ウォー』というタイトルにまつわることを訊きたいんですが、サーティー・セカンズ・トゥ・マーズというバンド名にも「戦闘開始30秒前」といった意味合いがありますよね? “闘い”は常にあなた方にとってのキーワードということなんでしょうか? ジャレッド:間違いないね。“マーズ”は火星であると同時に、闘いの神でもある。アートワークに赤を用いるのは、それが火星の色でも、闘いを象徴する血の色でもあるからだ。タイガーの写真にも闘いをイメージさせるところがある。そうやってすべてが絡み合っているのさ。

――このアルバムを出す前には、レコード会社とも小さな戦争(契約上の問題)があったようですけど。

ジャレッド:うん。ただしあれは、決して小さなものじゃなかったよ(笑)。

――失礼しました(笑)。今現在、あなた自身にとって“WAR”という言葉はどのような意味を持っているんでしょう?

ジャレッド:たくさんのことを意味する。個人的な闘い、社会的な闘い、ビジネス上の闘い、クリエイティヴな領域での闘い……。人生という旅には、実にたくさんの闘いが用意されている。ただ、俺はそうした闘いから逃げようとは思わないし、それに挑んでいくことが大切だと思っているからね。それが俺たちをミュージシャンとして、アーティストとして成長させ、結果、人間としてもバンドとしてもいっそうベターになることに繋がっていく。結局、すべて闘うことを通じて学んできたんだ。人間には、幸福な日々を過ごすために闘わなければならないこともある。それは運命でもあるように思うね。

――なるほど。ところで以前、ジャレッドは1stアルバムについて振り返りながら「個人的な表現の機会」だったと語り、2ndアルバムでは、それが「バンドとして共有できるもの」になったと発言していました。その流れを踏まえていくと、さらにその共有がバンドの外側にまで大きく広がったことで生まれたのがこの第3作、『ディス・イズ・ウォー』ということになるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう?

ジャレット:うん。その通りだ。もちろんふたたび内側へと逆行することも可能ではあった。だけど意識を外に向けることからすべてが始まっているわけだからね。ただ、それを目指しながら作ったかどうかは自分でも定かではない。たとえばモノを書く人たちにも、まったく意図していなかった種類の反応に驚かされることというのがあると思うんだ。音楽についても、それは同じことだからね。

――ええ。よくわかります。最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。残念ながら<サマーソニック>に足を運べなかったという人たちも多いはずなので。

ジャレッド:<サマーソニック>に来ずに、一体どこに行ってたんだ?(笑)

シャノン:ははは! でも、また絶対に来るよ。アイ・ラヴ・ユー!

トモ:シャノンだけじゃなく、俺たちはみんな日本を愛してる(笑)。だからもっとこの国で長く過ごしたいし、その機会をもらえたら嬉しいね。

ジャレッド:俺たちには夢があるんだ。そのひとつは、この国で、このアルバムを媒介にしながら、もっとたくさんの人たちと繋がること。まだ日本には、このバンドと音楽のことを知らない人も多いと思う。だけど、近いうちにもっと多くの人たちがこの作品を共有できることになるはずだと信じているよ。

文/撮影 増田勇一