
JAPANTOUR 2013
June 7th, 2013 at Chelsea Hotel, Tokyo
http://www.grindhouse.jp/img/report/Machina/Machina1.jpg
MACHNAは元EVANESCENCE、現WE ARE THE FALLENのジョン・ルコンプ(g)、
ロッキー・グレイ(ds)と、FUTURE LEADERS OF THE WORLDのフィル・テイラー(vo)
を中心としたUS南部アーカンソー州リトルロックに活動基盤を置く4人組ロックバンド。
彼らの演る音楽を人は“ポストグランジ”と言う。よりわかりやすく伝えようとするなら、
グランジ/オルタナティヴロックとヘヴィロックを合わせ、よくブレンドし、仕上げに“さら
なる歌心”を足して味を引き締めたっていう感じか。US西海岸カリフォルニア州サン
フランシスコのちっちゃなちっちゃなインディレーベルROUGE RECORDS AMERICA
より昨秋デビュー作『TO LIVE AND DIE IN THE GARDEN OF EDEN』(日本盤未
発売)を発売している。
あまりに手前味噌過ぎてホント恐縮だけど、4月にDJイベント、petit-GrindHouse night
Vol.203 ~feat. STONE SOUR & KILLSWITCH ENGAGE~開催で大阪にお邪魔した
ときのこと。友人より上記CDを渡され、6月に来日することも教えられた。日本でレコー
ド会社がついてるわけでもなく、招へい会社がヘルプしてるわけでもない。完全に“個人
輸入”ならぬ“個人招へい”。正直、茫然・唖然とさせられ、ただただ「彼女をそこまで突き
動かすものはいったいなんなんだろ?」と思った。帰京後、即CDを聴いた。そして最後
まで聴き終える前に彼らの音楽に持っていかれ、しまいには虜に。ハッキリ言うと、決して
派手さに満ちてるわけじゃないし、取り立てての“華”があるわけでもないのだけど、なんか
そこがまた堪らなくよくて、魅力だと思えた(苦笑)。調べてみたところ、そのCDが当時は
日本国内には流通してないことがわかった。「来日すんのにCDがないのはマズいだろ」
とふと思い立ち、GrindHouse recordingsで独占輸入するところから始め、来日公演を
ひとりでも多くの人たちに観てほしいと後方から援護射撃的なサポートをした。自分にとっ
てこういうのは初めての経験だ。
MACHINA JAPAN TOUR 2013は6月4日の新宿ANTIKNOCK公演よりキックオフされた。
その日と7日の渋谷CHELSEA HOTEL公演の2公演を観た。本音を言うと初日は3ヵ月ぶ
りのライヴということもあり、またジョンの機材トラブルも重なり(ジョンがこれにかなり気をと
られてた)、「ホントはこんなもんじゃないハズ」と思わされることが何度もあった、今一歩の
出来だった。終演後、楽屋でジョンがボソッとつぶやいた。「オレたちは演るたびにライヴが
よくなっていくタイプのバンドでさ(苦笑)」と。実際それは当たってて、CHELSEA HOTEL公
演じゃ見違えるくらいにすばらしいパフォーマンスを繰り広げた。PAスピーカーからの出音
もめちゃくちゃクリアで、音のバランスも最高、「これぞMACHNAのライヴの真髄!」を実感
させられた素敵な夜となった。
など5組のサポートアクトが出た後の夜9時
過ぎにMACHINAはステージに上がり、“The
Verdict”でパフォーマンスをスタートした。彼ら
は頭っからガツン! と噛まし、一気にオーディ
エンスをとりにかかってくるタイプのバンドじゃ
ない。むしろスロースタートとでも言えるような、
曲を繰り出すごとにジワリジワリと、しかし着実
に盛り立てながらオーディエンスを惹きつけて、
時間をかけて虜にしていくことを得意とする。
決して手数は多くはない。だけど“屋台骨”の役
割を果たすロッキーとサッド・エイブルス(b)に
よる安定感に裏打ちされたリズム隊。その上で
ジョンが始終マイナーキーの音像でコーティン
グしたギターで重厚感とダーク性に満ちたリフ
を弾き、ときに浮遊感あるもどこか粘っこいメロ
ディを絡めていく。彼らが描き出す“MACHINA
ならではの音世界”をよりエモーショナルで高揚
感のあるものにするのが、フィルのヴォーカルだ。
“熱唱系”と言うにふさわしいスタイルで、最初か
ら最後までほとんどヴォーカルラインが乱れな
いのには驚いた。相当歌が上手い、なによりの
証拠だ。あの、超ロングなドレッドヘアを振り乱す
姿もカッコよくて、見事なまでに“様”になってた。
ALICE IN CHAINS(AIC)のカヴァー“Would?”も
まさにズッパマりだった。Antiknock公演でこのカ
ヴァーを演った後、フィルが「ありがとう、レイン」と
言った。レインとはAICの初代ヴォーカリストで、
2002年4月に薬物の過剰摂取が原因で他界した。フィルはもちろん、メンバー全員が
AICの洗礼下にある。その後“Belladonna”“Crown”“Trust”などが続き、後半の後半に
一番大きな盛り上がりが場内に広がり、終演した。
時間が押してたため、最後に演る予定だった“Curse”をカットせざるを得なかったのは
残念だった。サッドも「“Trust”でセットを締めくくるなんてあり得ないんだけど仕方ないよ」
とボヤいてたほどだ。大阪・火影-Hokage-公演では“Trust”と“Curse”の間に、FUTURE
LEADERS OF THE WORLDの“Let Me Out”を披露したそうだ。
滞在期間は約10日間。東名阪での本公演4本のほか、その合間を縫って行われた東阪
でのアコースティックライヴ2本の計6本。MACHINA初の来日公演は、疑う余地などコレッ
ぽっちもないほど確かな“轍”を残した。その彼らをひとりの熱心なファンが呼び寄せ、それ
に呼応した大勢のファンがさまざまな情報を逐一拡散することで、バンドへの注目度が高
まり、盛り上がりも生まれた。前例のないことと断言できるし、もしかするとこれがこの先に
“新たななにか、もしくは気運”を生むかもしれない。そういう意味でも、MACHINA初の来日
公演は大事な意義を持つと思う。
文・有島博志/text by Hiro Arishima
photography by Masanori Naruse