長女一家が婿殿の転勤でドイツへ旅立ってから一カ月になる。

日本ではここ数年忙しくて放置していたInstagramに、何度かドイツ暮らしをアップしている。

家族にはfacebookの家族専用のグループページにたくさんの写真を載せてさらに詳しい様子を報告してくれている。

まずは職場が用意してくれた社宅のようなアパートに仮住まいし、船便が届くまでに家を探す。

いろいろな手続きに奔走し、車を購入し、市の教育委員会のような所へ赴き二人の孫を受け入れてくれる学校を探す。

公立なのに「待機児童」がいるそうで、通える範囲内で空きのある学校を探すのもそう簡単ではないらしい。

移民が多いことも関係あるのだろうか。

三週間が経って、ようやく小3の下の子が学校に通えるようになった。

小6の姉の方はまだだ。

今週中には連絡が来るらしいが。

ビザの関係もあるのだろうが、相変わらずドイツは何でもスローペース。

ドイツでは小4から小5になる時に分かれ道がある。

大学を目指す進学校、職業の専門的な学校、普通の中学校だが大学の試験は受けられない学校、他に公立でも小中高の一貫校のような学校もある。シュタイナー学園もメジャーだ。

小4で将来を選択するのか？と驚くが途中から他の学校に移ることも可能ではあるらしい。

婿殿の駐在は最長3年なので、大学進学には影響のない歳で帰国するし、そもそもドイツと日本の学校ではカリキュラムが違い過ぎるので帰国してからのことはあまり考えていないようだ。

日本の学校で学ぶはずの勉強は日本語補習校と自宅学習でなんとか補う。

自分自身が身をもって経験している娘は、そういうリスクより、ドイツ暮らしで得られるさまざまなプラス面の方に目を向けている。

何よりも、子どもらが楽しく通えることが一番。

孫たちはどこにも所属しない一カ月もの長いお休みをエンジョイし、近所の探検やスーパーやドラッグストアやパン屋さんを探して歩いたり、日がな一日公園で遊んだりした。

「毎日パラダイス！」と言っていた。

そりゃあそうだろう

下の子は初登校の日は緊張し暗い顔で学校までの道を歩いたが、帰りは友達に囲まれ「チュース、チュース」とハグされていたそうだ。

転校生特需がいつまで続くかわからないが、とりあえずはホッとした。

私は、27年前のことが鮮やかに蘇ってきた。

我が家の娘2人がインターナショナルスクールへ初登校の日、大き過ぎるリュックを背負って玄関先でスクールバスを待つ姿。

待てど暮らせどバスが来ず、学校に電話したら運転手のミスでスルーしてしまったと言う

ゆるゆるドイツの洗礼を早速受けた。

たぶん夫が送って行ったのだと思う。

その辺はよく覚えていない。

ただ、その後、一日中落ち着かず、時計を見ながら「今、何してるだろう？　言葉もわからずオロオロしてるんじゃないか？」などと過剰に心配して胸が締め付けられるようだった。

我ながらなんて心配性だったのだろう！

まあ、長女は平気だったが、次女は初日から「辛い！行きたくない！」と言い出して、毎夜毎夜寝る前に泣くようになったから、心配した通りになった。

その三カ月後に現地の幼稚園に通い出した息子も、なかなか馴染まず、ついには登園途中に自転車の安全ベルトを外して飛び降り、走って逃げ帰るようになってしまった。

三人の子どもが日常をつつがなく過ごせるようになるまでに半年ぐらいかかった。

「子どもはすぐ慣れる」というのは幻想だと、つくづく思う。

子どもにも繊細な面があり、プライドもあり、だけど大人のように先の予想ができないから、いつまでもこの絶望的な環境に閉じ込められたままなのだと思ってしまうのだ。

我が家の子どもたちはインターナショナルスクールだったので、それから一年間は自宅で中学英語の問題集に親がかりで取り組んだ。

耳で上達する速度に、言いたいことを言う方法が加わりかなり手助けになった。

一単元クリアしたらポケモンカード何枚と人参をぶら下げて(当時は日本出張の時に夫が買ってきた！)、小3と小1の娘らは中3の問題集まで、幼稚園年長の息子も中1の分までやり通した。

相当に頑張ったと思う。

「英語も自然にすぐ喋れるようになる」も、幻想。

努力は必要なのだ。

「少し時間がかかっても必ず楽しくなるからね」と旅立つ時に孫たちには言っておいた。

子どもの成長する力を信じて、私たちは遠くで見守るしかない。

27年前、初登校の日

日本のランドセルが頭にあって大きなリュックを買ったら、こんな大きなものは全然必要なかった

教科書は持ち帰らない。そもそも個人所有の教科書がなかった。

ドイツの学校の話