タッちゃんをヘッドロックして後ろからその頬に唇をあげた南は、すぐに勉強部屋を後にした。でもそのまま家に帰ることはせず、束の間そのドアの脇に佇んでた。
野球部に入って良くも悪くもちゃらんぽらんさがなくなってきたタッちゃんだけど、それでもカッちゃんのような生真面目さはない。だからタッちゃんは南との仲をどう思っているか、一抹の不安はあったのです。もちろんこれまで述べてきたようにカッちゃんが亡くなってから、タッちゃんと南が清い仲であったわけではない。でもきっかけはいつも南からで、タッちゃんが自分から狼になり襲ってくることはなかった。
もちろん、タッちゃんと南の間には上杉和也/カッちゃんという問題があり、それを解決しない限りタッちゃんは自分から南を求められないと、理屈では想像できてた。でも所詮他人の心だから、この南の推測が的を得たものかどうか、焦れる時もあった。
そして今日。タッちゃんの口から南との仲/関係を真剣に考えてることが分かった。曖昧にせざるを得ないのも亡き弟の問題があること、タッちゃんの軽い口ぶりはそれを避けるため/避けたからと、南は容易に想像ついた。そういう風に大切に思ってくれる男の子に、南は恋焦がれることが出来た。勉強部屋を出て少し強い弱火に落ち着いたけど、意識して持続させ、さらに風を入れて炎を成長させる。少しでも風があれば涼しさを感じられる夜長の秋、南はそれに対抗するようにタッちゃんへの想いを燃料に、身体を火照らせる。そして再び勉強部屋のドアを開けた。
「南、どうした?」
怪訝な顔のタッちゃんに南は満面の笑顔を浮かべ、脱いだ靴を揃い直さずにタッちゃんに突進した。南としてはエネルギーの要る行動だった。その勢いで南はその唇をタッちゃんのそれに捧げたのです。南がその舌でタッちゃんの舌に挨拶した後、
「好き、タッちゃん…」
という言葉を添えて。すぐさま南は舌をタッちゃんの口に差し入れ、その舌を探る。ほどなくタッちゃんは南の舌を見つけてくれ、粘膜同士の戯れと互いの舌の下から供給される水分をすすり呑むのを繰り返す。そしてタッちゃんの口の中を一通り味わった南はその舌を引っ込め、南の口の中を蹂躙するよう促したのです。
まさに攻守逆転。タッちゃんの口の中だったらタッちゃんを弄んでると思うくらい心の余裕があったけど、いざ口の中を探索されると「やられてる」という思いになり、断続的に引きつき、顔から上半身が火照り始める。秋の夜長でも窓を閉め切ってるから通気が良くない。いずれVネックのノースリーブのセーターを脱ぎ、綿のシャツの釦を外して熱気を解放せざるを得ないと、想像ついた。それこそが南のタッちゃんへの想い。
でもタッちゃんは動転して気が回らないらしく口撃だけで、腕だって南を掴もうとしない。だから南はタッちゃんの後頭部に両手を重ね、タッちゃんを椅子から転げ落としたのです。
「南、危ない!」
まるでタッちゃんが南を心配するような言い方だけど、南はタッちゃんに受け身させてあげたのです。まず南が回り込んで下になり、すぐに半回転して南はタッちゃんを見下ろす。南のもの欲しそうな顔をタッちゃんに晒す。南だって性欲に苛まれる健康な女の子。それをタッちゃんにだけは知って欲しい。
「南、いいのか?」
ちょっと真剣な表情のタッちゃん。だから南は笑顔で返す。
「タッちゃん、何したい?」
そしたらタッちゃんは腕を突っ張らせて無防備になっている南の上半身に、自由になってる両手を近付けていく。その時の南の目にはえらく遅く映り、切なさの感覚が走って大きい腹式呼吸になり、南自身の唾を飲み込む音が大きく聞こえ、顔が火照って汗が噴き出るのを自覚する。そしてタッちゃんが柔らかく、外見からわかる女の子の特徴を包んでくれた時、南はのけ反ってその感覚を堪能したのです。そして初めは宛がう感触がしっかり掴まれることになり、南はそこから身体の中心に至る、そして両腕と両足に走る生殖に至るしびれを貪った。
蹲った南は両腕を突っ張ることが出来ず、膝から先を床に付ける。それでもう少しでタッちゃんの胸板と南のふくらみが触れる形になる。サマーセーターを脱がすかそれとも南を下から抱きしめてくれるか、南はそんな想像で期待してた。実際にやられたのはちょっと変態っぽい。サマーセーターの下から手をくぐらせ、シャツ越しに南のふくらみを堪能することだった。タッちゃんの腕はシャツとサマーセーターに挟まれて疲れが少なくて済み、南はタッちゃんの手の感触がより味わえる。しかもまだ次の段階があるから、じれったい思いが長く続き、より深い情念が得られると思った。
とはいってもシャツ越しでも十分堪能できた。タッちゃんは南の形を確かめるように、上から下から横から、掴んだり擦ったりなでたり、新しい玩具を与えられた子供のようにその感触を楽しむ。そのたびに南は身を低くし、むしろタッちゃんの胸板にその身を預けたくなる。そして南の目の前には焦点の合わない距離でタッちゃんの顔。南は当然のように唇を落とそうとするが出来なかった。仰け反ってしまった。タッちゃんが南の二つのふくらみをそれぞれの手で握りつぶしたのです。南は膝立ちで上体を起こし、それでも口に手を当てて声を抑えることはした。しかしその後に続く鈍痛、被虐の味を貪ってしまうのはどうしようもなかった。自分からサマーセーターを脱いでシャツの釦を外し、さらにブラジャーの後ろのホックも外す。心理的にも身体的にも南は楽になり、そのままタッちゃんの腿に腰を落としてタッちゃんの上体を抱き寄せたのです。