南は下から上へ、由加さんの下半身の最後の砦の上から、慈しむようにいやらしく生命の源泉の入口、新たな生命の出口をなぞる。そこまでやられたら南は完全に堕ちた、カッちゃんのものになったと夢想しながら。由加さんは腰を痙攣させて浮き沈みし、その間隙から南は中指を由加さんの一番恥ずかしいであろう場所に宛がう。耐えられなかったのか由加さんは上体を起こし、右腕を伸ばしてきた。南はそれを許さず由加さんの腕を掴み、由加さんの裂け目の上端と思われる個所を優しく噛む。
 由加さんは、
「カッちゃん、……っ!」
 と倒れて、嚙んでいた自分の着衣の残骸を吐き出してしまう。それでも声を出すことは憚れるのか、深呼吸で自分の高まりを沈ませようとする。気をよくした南は最後の砦を剝くことにする。しかし敢えてカッちゃんである南は、南である由加さんに了解をとる。
「南…」
「何?カッちゃん…」
南は見せつけるように由加さんの下半身に直接触れてる着衣の左右の脇、それぞれに南の両手をかける。由加さんは充血した目を潤ませ、大きく開いた後で絶望の面持ちで細め、十分な量の雫を落とす。そして力尽きたように上半身を落としたのです。でも倒れた後に頷いてくれ、情欲に支配されている腰を力をこめ、浮かしてくれたのです。由加さんはそれだけで重労働だつたらしく太腿にかかったところで腰を落としてしまう。目を上げると由加さんの瑞々しいふくらみは盛大に浮き沈みし、その奥の顔は目をつぶって何かを耐えてるよう。南はそんな由加さんをあの時の浅倉南を罰してやりたいという思いを持って、由加さんの扉を左右の親指で展開させたのです。
「カッちゃん、そんな…」
 それは南が開いた直後、南が由加さんのさらなる湧き出しを確認してのこと。さらに由加さんのそこはこれまでの南のいたずらの影響からか、少しずつ、断続的に、ひきつきを伴って液体を放出する。南は行き場を失いただ染みをつくるだけの水分を残念に思い、すすり呑むことにする。南が口を当てた時、由加さんは
「あ…カッちゃん!」
 と応えてくれた。もっとも太腿から持ち上がってしまったので由加さんの急所の視漢はやめ、南の両手は由加さんの太腿を抑えるのに使わなければならなかった。だから南は、愛を注がれるべき由加さんの隙間に直接舌を潜り込ませ、柔らかい両側の壁に直接触れることになる。しかし今の由加さんは南。今南がしている由加さんへの蹂躙は、南を背後から抱きしめたカッちゃんが南を手に入れるため、蛮勇を持って南にすべきだったこと。だから悶え、汗ばみ、息せき切る由加さんの姿に、南は容易に伝染する。
 気がついてしまうと上半身の熱さはもう限界だった。手早くベストとブラウスの釦を外して熱を逃がす。深呼吸を繰り返した後でやっと顔面も火照り、汗びっしょりなのに気づく。でも落ち着こうとした南を生殖を伴わない性愛に再び向かわせたのは由加さんの方だった。
「カッちゃん…」
 その弱々しい音の響きに南は気づくべきだったのかも知れない。その台詞はすでに私、浅倉南を演じてくれたものでなく、由加さん自身の罪を糊塗するための方便になってたことを。しかしそんなこと、由加さんとの性愛ゲームに夢中になってたこの時の南はもちろん、客観的に振り返ることが出来る今振り返ってみても無理な相談と分かる。だから由加さんの弱々しさを被虐の喜びと判断した南は由加さんの脚を割り、その間に南の右の太腿を宛がったのです。自分でやる時はともかく、他人に愛を捧げる時は南自身の身体を使いたかった。
 由加さんは南からの愛に十分喜んでくれた。呼吸も不規則なのに南の上体を引き寄せてくれ、多少下がっている南のふくらみを由加さん自身の生硬なふくらみに押し付けたのです。それは押しつぶす/押しつぶされるという言い方の方が合ってる。それには南も由加さんを観察する余裕がない。由加さんからの情念を直接味わうことになる。それにはもう一つ、由加さんが南の唇と口の中をなぶったからでもある。それは性急で、貪欲で、制御できてないものだった。誘い方が弱かったのにどうしてと、南が戸惑うほど。しかし南も由加さんの制御のなさに感応してしまい、南は右の太腿で由加さんの愛の扉をなぶる。押し付けて上下に擦る。扉の上端の男の子のミニチュアを意識して。丁度気持ちいい当たり具合になるように。
 そしたら由加さんは声を漏らしてきた。無理をし過ぎた思った南は合わさった唇を解く。しかし由加さんは雫の橋が切れる間もなく口を寄せてくる。南は漸くただ事でないと思い、南は唇を捧げて南の舌を由加さんに預け、腕を由加さんの背に回して由加さんからの愛を受け止めようとしたのです。由加さんにも南と同じような愛の罪があると察せられた。しかし太腿ではもどかしいと察せられた南は、右手の中指で由加さんの皮被りの急所を愛しむことを思いつく。そのため南は腰を浮かし、右手を由加さんと南の腰の間に入れる。
 そして見当をつけ引っかいたり周りをなぞったりしてた。しかしまだ由加さんは南の口の中でくぐもった声を出してる。苦しいのか、昇り詰めることを我慢してるのか。だから南は止めを刺してあげたく、一つ目の関節まで入れる。そしたら由加さんはそれを待ってたように腰をせり出す。慌てた南は由加さんとの温もりを続けたく、由加さんの上半身を左手だけできつく抱きとめる。しかしそれは由加さんのせり上がった下半身と、南の降りてきた下半身がくっつくことを意味する。そして間にあるのは南の中指。そう、南の中指は由加さんの愛の洞穴を貫いたのです。それだけならやり過ぎだった性愛として、南も由加さんも恥ずかしい記憶として残るだけだった。
 しかし由加さんはなぶっていた南の唇と舌を自分から振りほどき、決定的な叫び声を発したのです。
「――ちゃん!」
 カッちゃんじゃなかった。そして今好きになっているはずのタッちゃんでもない。それは心の内を晒す言葉。世の中にあると聞いてた南は、意外とも思わなかった。