宇宙への夢を『2001年宇宙の旅』ではあり得る(出版当時の)近未来の出来事として物語った。超遠未来が舞台り本書では都市と集落の未来像を提示した上で、同じ主題を両者が携えて挑むべき対象にする。本書を読むと小説「2001年」でのキューブリックの影響の巨大さが理解でき。多分キューブリックは作家クラークの子供っぽさを排除するため、台詞を極端に排した映像作品を制作。

 解説でも言及しているけど、主人公アルヴィンは世界を知りたいという「子供」であり、実はクラーク自身を投影した人物。状況を引っ搔き回す、トリックスターの主人公で私が思いつくのは「トーイ」。ロックの自主制作から芸能界へ成り上がるマンガ、上條淳士『To-y』の主人公、藤井冬威のこと。実際、トーイの台詞に「退屈ってやつを…ぶっつぶす!」があったし。

 しかしダイアスパーの人間のアルヴィン、リスとの最初の往復こそ強引だったものの、ダイアスパーに帰ってからの態度は極めて大人。矢吹丈はプロボクサーへのへの戦略の一つとして、ウルフ金串を不意打ち。アルヴィンは故郷であるダイアスパーが都市なので、元々のわがままさは洗練された所作と、率直に情熱をもって語る態度に変わり。

 しかし本書の面白さはミステリの面もあって。集落「リス」の意味とともに、人類が地球に戻った理由も解明され。しかも断片として語られてきた神話は嘘であり、全く違う理由で人類は宇宙を諦めた点にも、今本書を読む価値があるというもの。

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