私が永六輔の声を聴くようになったのは『土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界』。もちろん、
『上を向いて歩こう』などの作詞家として1980年代から知っていたけど、反骨の人と知ったのは、
上記の番組で永の過去をゲストの人が言ってくれたから。だからラジオで主張する権力批判も理解し、
納得できました。しかし断片ごとの情報なので永六輔の全体像の把握に失敗してたのです。

 なので本書の刊行は本当に有り難く。というより私自身が永六輔を定義する本を書きたいという、
野望を持っていたのですね。しかし単著でも膨大だし交友関係も広いから、着手しようとしたら、
膨大な手間と時間が要ると容易に推測でき。だから故人をよく知る記者が書いてくれたおかげで、
私は苦労を避けることができた格好。

 渥美清、黒柳徹子、小林亜星、坂本九、中村八大、野坂昭如、淀川長治、などなど、証言してくれる、
あるいは永自身が言及する著名人の多彩さに今さらびっくり。また芸能活動以外にも尺貫法の復権や、
晩年の「パーキンソンのキーパーソン」などの社会運動の旗手の記述もあり、作詞家だけで知る人は、
驚かれると察する。とはいえ入れて欲しかった話もあって。

 筆頭に挙げるのが永と東京大空襲の関係というもの。私からの説明は避けますが、永さん自身が、
ラジオで説明するときは決まって泣いた話。昨年の七月六日までに出版できれば(礼儀から)言及を、
避けてもいいけど、死後出版だから永の反戦の原点として開陳してもいいと思うのですよ。

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