『量子革命』の二人の主役、ボーアとアインシュタインが他界するまでは、正に「量子革命」と、
殆ど同じ展開。もちろん同じ時代、同じ題材を扱うので同じ粗筋なのは当たり前ではあり。また、
ベルの定理の発表以後、「もつれ」を扱うのも前掲書と同じ。ただより「お話」になっていて、
前半までは戯曲に出来ると思ったほど人物の会話が重要になってる。
後半にオッペンハイマーの科学以外の言動の問題などがあって物語が錯綜。でも人物描写は、
よく出来た小説のように明確。映像にするには人物の言動の明確さと削減が求められて苦労するが、
読むだけなら人物の苦労と葛藤と歓喜を体験するだけ。私は感心して楽しんだのでした。ただ、
ヒュー・エヴェレット3世と多世界解釈を本書が避けた違いはあって。
ドイッチュの名前が出て来たのでやはり並行宇宙を―扱うと思ったら、著者のギルダーはもつれは、
現実の現象という主義からか、「もう一つの世界」を回避。『タイム・ワープ―平行宇宙への旅』を、
私が買ったのは中学時代のはず。当時「エヴェレット3世」という名前を拝見したけど、物理学での、
重要さは伝記を読み漁るまで侮っていたのですよ。
然るに理容師の謎の解明にたびたび見かける名前なので、今さら驚いているところ。だから本書は、
著者の思想として世界を拒否した偏っている本。だから終盤は結構ぐだぐだだけど、量子論の現状と、
甘い評価も可能というもの。手軽な価格で生きた科学者が知れる、物語好きに私はお勧め。
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