十二月
ハーバー、オットー・ザクア、ゲルハルト・ユス、マイトナー、ヴィルシュテッター
一九一四年一二月、自身の研究所でハーバーの軍事研究は最初の死傷者を出してしまった。爆発性材料を試験的に混合したところ、爆轟が生じ、化学者オットー・ザクアが死亡、もう一人化学者ゲルハルト・ユストは右手を失った。マイトナーは争議の模様をハーンに書き送った。ハーバーとヴィルシュテッターは滂沱の涙を流し、慰めようのないほどだったという。「むごい犠牲が無駄にならないように、と祈るだけでした。事態がもっとするすると進展すればいいのに!」
『リーゼ・マイトナー―嵐の時代を生き抜いた女性科学者』より
ハーン
結局、テーブルを中心とするフランダース決戦は雌雄を決しないままに天候の悪い十二月に入り、本格的な戦闘は沙汰やみになった。しかし今度は湿った泥の塹壕のなかで、病人が激増した。
「毒ガス開発の父ハーバー」より
ハーン、リーゼ、(マルチン・)ローゼンバッハ
一二月、ハーンはベルギーの戦場にいた。リーゼはまめに手紙を書いて、科学研究の詳細や同僚のニュースを知らせたり、従軍している自分の親戚も元気にしているのだからあなたも大丈夫、とハーンを元気づけた。ハーンの助手マルチン・ローゼンバッハがフランスで戦死したことを知った時、ハーンにはとても教えられなかった。一九一四年一二月、リーゼは思い切って書き始めた。「私が知ったのは一〇日前でした。でも、お知らせする気にはなれなかった。(後略)」
『リーゼ・マイトナー―嵐の時代を生き抜いた女性科学者』より
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