四月から五月
ベルリン
大学の前景。
(男の声) 「学長、訓示をお願いします」
(学長の声) 「うむ」
壇上にいる、突撃隊員の茶色のシャツを着た男。
マイトナーやハーバーを含む職員や多くの学生、聴いている。マイトナーは憮然とした表情。
シュレーディンガー、目を下げている。
(シュレーディンガーの声) 「一九三三年四月から五月、私講師から教授にいたるまで、ユダヤ人はたちまちのうちに、しかも整然と追放された。学生や同僚が表立って抵抗することはなかった。「追放は不当」と義憤を表明するでもない。学生や教員のストライキもない。研究の自由を要求したり、公平や良識ある行為を求めたりという動きもなかった。むしろ何年も前から大学か右翼思想を培う場になっていた」
堂々として訓示している学長。
(シュレーディンガーの声) 「ベルリン大学の総長さえ、突撃隊員の茶色のシャツを着ていた。数学者として、ナチの〈ドイツ数学〉主要提唱者の一人であり、「アーリア人の数学」を特集する雑誌の編集長もつとめていた」
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