私が電力の自由市場に言及しないのを批判した池田信夫ですが、四月七日の記事で、
東電の規制改革が検討されていることを肴に市場への道筋を論じています。しかし電波利権と違い、
「現在の状況は最悪の裁量的規制」と定義しているけど、入れ込んでいないのは文面から明らか。で、
態度が他人事だから外資も含め、競争相手を既存の企業に求める。

 もちろん電力事業に上昇志向の孫正義が出てくることは期待できない。とはいっても輪番停電で、
私自身は直接は聞いていないけど、工場の操業に多大な支障を来たしたはずで。ならば自分で発電し、
あまれば蓄えたり売ったりしたいと、事業者は考えていることと。今回検討されている規制改革も、
中小はもとより経団連に属する大企業からの突き上げとも推察でき。

 だから送電と発電を分離しても「めちゃくちゃな競争を挑む企業は出てきそうにない」という、
池田の見立ては「競争がないからやっても無駄」という結論に結びつき、結果として、
需要を掘り起こす努力の放棄であり。むしろ電力事業においては小規模の発電を許し、
小規模発電の統合を促す形で、東京電力の競争相手を育むのが有効な手でしょう。

 だから必要なのは、

・設備ベースのプラットフォーム競争がベストである
・企業分割は株主の財産権を侵害するため、法的に困難である
・設備の一部を開放させるアンバンドル規制が有効な場合がある
・行政が裁量的に介入する非対称規制は最悪である

のうちの三番目。池田は「いろいろな偶然の重なったまぐれ当たり」と云うけど、問題点の具体例を、
示すことは無く。だから送電網と発電の分割という二番目に言及へ。ただし池田は分割しても、
競争相手は海外に求める必要があると判断。私の見立ての違いの原因は一番目の考え方。池田は、
「電力網を各家庭に二重に敷設することは考えられない」ので、始めから除外を。

 しかし発電と送電が一体の東京電力の現体制で論じるからであって、分離したあとなら、
発電設備の「プラットフォーム競争」も十分できるのでは。もしくは設備の一部を開放させる、
「アンバンドル規制」を実行したあとに。池田信夫も大衆批判は鋭い記事の書き手だけれども。一方、