予想通り、あるいは巷間伝えられている通り、上質な映画。つまり明日への希望が信じられた時代のもの。
電化製品一つひとつが文明の進歩の象徴として、その先の未来が無条件に夢に直結できた時代。また、
一つひとつの事柄に驚きと喜びが共有できる、そんな共同体が健在であれば。地続きの未来を理想化すること、
極めて自然。

 しかしこの映画の世界観は、日本人が海外に目を向ける必要なかった頃のもので。いや米国政府から見れば、
社会/共産主義からの防波堤という役割と共に、空襲/原爆投下に関しての贖罪という面も。駐留軍が、
一面更地になっている状況を見れば、大方の軍人は良心が痛んだ筈。あるいは日本の政治家も、
冷静になれば焦土と化した国土に、申し訳なさを持てるはずだから。

 つまりこの映画の世界こそが、親である米国・日本政府からのクリスマスプレゼント。終戦直後、
当時の日本は再建させるには未熟児だったため、必要だったのが保育器。そして13年経ったこの時代でも、
視線が海外に向かうことはなく。

 しかし米日両政府が永遠に保育器を運転できるはずも無し。図体は大きくなるし、
両国とも政治的・経済的に余裕の無くなる時点が来るはずであり。だからこの映画の世界は、
本当はあらかじめ破綻が予想済み。とっくに保育器を追い出され世界の不合理を知る日本人なら、
この世界に憧れること、不毛。

 しかし映画としては、五つ星満点で、星四つを。