野球場、外観。入口の立て看板「全国高等学校野球選手大会 予選会場」。張り紙に他の組合せに混じって、
「三上工業-明青学園」も。
(球審の声)「ボール、フォアボール」
 三工の投手、汗を掻いている。明青学園の走者、1塁、2塁、3塁に。スタンドの笑顔の南と佐知子。
打席に立つ和也。観客席から、上杉コール。
 投手、ボールを投げる。上杉、ボールを打つ。高く飛んでいく打球。打球、センターのフェンスにぶつかる。
おっている三工のセンターも。
 1塁ベースを踏んで2塁に行きかける和也、センターを見たあと、ホームベースを一瞥。
(球審の声)「セーフ」
 万歳をしているホームベースを踏んだ明青の選手。歓声。
(球審の声)「10対0! 7回コールド、明青学園!」
 沸き立つ明青の観客席。小走りにベンチに戻る和也、マウンドを一瞥。膝にそれぞれの手をあてがい、
うなだれる三工の投手。戻る途中で和也、明青のメンバーに荒っぽい歓待を受ける。喜ぶ、南と佐知子、
校長以下教職員、西尾監督。

 球場の外、達也と犬のパンチ。
達也「行くぞ、パンチ」
パンチ「オン!」

 球場に横付けのバス、走り出す。バスの中、浮かない和也と機嫌のいい孝太郎。
和也「孝太郎、大振りが目立ったぞ。もっと1打席大事にしろよ」
孝太郎「いやあ、最初ホームランだろ。でもってあの点差。ついつい2発目と」
和也「そうやってペースを崩すのが一番怖いんだ。今日のピッチャー、あまりにも悪過ぎだ。あの人、
  きっと今夜は悔しくて眠れないよ」
孝太郎「和也…」
 南、横目で和也。
(西尾監督の声)「その通り」
 南、監督に顔を向ける。
西尾監督「一つ狂えば逆の立場が高校野球だからな。今日の大勝でいい気になる必要ないぞ」
 バスの背面。
(一同の声)「オー!」