ＬＰ『ＳＴＯＰＪＡＰ…』…ＴＨＥＳＴＡＬＩＮ

　パンクロックはもともと日本語で歌われるためのロックでなかったのか？　いま改めて聴いてみると、
そんな気にも。それは言葉を叩きつけるパンクの手法が、やけに自然に日本語の歌詞に乗ることから。
　英語であれば音節で区切るか、短い単語を放り込む工夫が必要だけど、
五十音それぞれに音符を対応させる言語では却って、大いなる利点になるらしく。

　そんな中で頂点を極める一枚がこれ。その影響力、完成度、迷いのなさから、日本のロックの名盤、
５０枚には確実に入るもの。経済ではオイルショックを乗り切って、
風俗では「ニュータイプ」というバラ色が受け入れられた時分。その１０年ほど前の安保闘争、
直接関わることのなかったミチロウはしかし、そんな状況をハリボテだと見抜いていたのでしょう。

　「何にも思わずにここまで来たけれど　このまま許されるはずはないから
　　いまに何か嫌なことが　不吉な何かが必ず起きる」

　バブル景気に上り詰めるプラザ合意の直前、社会的には校内暴力をはじめ不吉な事件はポツポツと。しかし、
愚民化された大衆は世界からの羨望に酔い、政治家や官僚は敢えて有効な施策せず仕舞い。だから、
この詞の通りの現状だけど、予言ではないこと注意してね。人々の澱（おり）として溜まっていた後ろめたさ、
それを白日の下に晒しただけ。

　その意味で時代の子だけど、いまだ説得力を保つのは独立普遍の価値からか、
または進歩していないだけだったりして。