一市民の目から見た、パニックムービーでありロードムービーという観点で鑑賞すれば、
決して出来が悪いとは思えず。小西克也氏が「訳が分からない」と感じたのは、劇中での解説が序幕と終幕だけ、
つまり一つひとつ謎を解いていく楽しさがないという点によるものと。それは為政者の視点だけど、
日本の怪獣映画でさんざんやられた手法だであって。それに無敵と設定した敵ならば超兵器がない限り、
無様な政治家の右往左往を見せられるだけ。

 それよりもスティーヴン・スピルバーグが選んだ物語は、極限状態の中で人はどんな行動を取れるか。
それを超えるものでもそれ未満でもなし。スペクタクルのハリウッド映画の常として、
主要登場人物は限られているものの。港湾労働者という地に足の着いた人間を主人公にしたことで、
無理のない感情移入が出来。

 主人公が乗る車がなぜ動けるのかとか、異星人のセンサーに赤外線はないのかとか、
小西氏の疑問点にスピルバーグ監督が思い至らなかったはずもなく。それを帳消しに出来るほどのスペクタクル、
少なくとも私は一難去ってまた一難のサスペンスに、まんまと乗せられましたから。

 何回も鑑賞すればその単純さに物足りなさを感じるかも知れませんが、個々は映像の完璧さに敬意を表して、
星4つ半。