「番号継続」の衝撃(下)
都内の携帯電話販売店で顔を寄せ合う若者たち。手には六月に発売したKDDI(au)
の「ウォークマンケータイ」が握られている。「もう1円になっているのか」。
ソニーの携帯音楽プレーヤーの名を冠して話題になった端末でさえ、発売二ヶ月
強でただ同然まで価格が下がる。
今夏に入り端末の全般的な値下がりが顕著になった。原因の一つは携帯電話会
社が販売店への販売奨励金を積み増していること。販売店の値下げ原資になる。
もう一つはこれまでにない早いペースでの新製品投入だ。いずれも番号継続制度
を控えた携帯電話会社間の競合激化が背景にある。
ソフトバンクの宮内謙取締役は「他社を上回る数の機種を投入する」と意気込
む。孫正義社長は「三ケタ(百)のモデルを用意しろ」と号令をかけたともいわ
れる。消費者は端末の値下がりと、選択できる機種の増加という恩恵を受ける。
端末メーカーにとっても、携帯電話会社を移る顧客が増えれば買い替え需要が
期待できる。一方、開発負担の増加はメーカーの合従連衡を促す。機能の多様化
や高度化で部品の重要性が増し、半導体メーカーやソフトウエア会社の存在感も
大きくなるなど従来の業界秩序は揺らぎ始めた。
七月、シャープとともに国内三強を形成する松下電器産業とNECが開発分野で
包括提携に踏み切った。狙いは機能の開発負担を軽減し、デザインや操作性など
消費者に訴えやすい部分に開発資源を集中することだ。
先例は2003年に開発を統合した日立製作所とカシオ計算機だ。カシオは本
体を薄く、液晶画面を大きくし、メールのやり取りに向いた機種を開発。今年上
半期に量販店で最も売れた商品となった。カシオ日立モバイルコミュニケーショ
ンズの大石建樹社長は「ようやく統合の効果が出てきた」と話す。
開発の合理化は部品やソフトウエアにも及ぶ。KDDIは通信機能や基本ソフト
(OS)など、携帯電話に搭載するソフトウエアの大部分を共通化することを決め
た。auの携帯に大規模集積回路(LSI)を供給する米クアルコムが協力する。クラ
ルコムとの関係を深めるにつれ、同社なしではauの携帯はつくれないほどの状況
になりつつある。
対照的にドコモはOSを一つに絞らない戦略をとる。松下やNECは無償OS「リナッ
クス」、ドコモ主導のLSI開発に加わる富士通、三菱電機、シャープは英シンビ
アン製を採用している。
「将来はOSをベースに二陣営にし開発を競わせる」(ドコモの中村維夫社長)。
開発効率を犠牲にしてでもOS共通化を避けようとするのは携帯業界での「ウィン
テル」出現を恐れるからだ。
パソコンのように半導体メーカーやソフトウエア会社に開発の主導権を渡せば、
携帯電話会社のペースで新サービスを提供していくことが難しくなる。結果、通
話料金でしか競争できないという状況に陥りかねない。
番号継続制度がもたらす衝撃を推進力にするか、あるいはその波にのみこまれ
か。携帯電話会社、端末メーカー、部品メーカーの枠を超えて、消費者の選択に
耐える製品供給体制を築くことがカギになる。