最終章 クリスマスの奇跡
「あの~」春野優介だった。
優介は、24日みわが水城 俊との関係に答えを出す前に、俊がバイトをしているこのコンビニにやってきたのだ。
「はい、なにか?」と店長。
「こちらで水城 俊って人働いてませんか?」と優介。
「失礼ですけど、どちらさまでしょうか?」
「その俊の大事な人の兄です。」と優介。
「えっ。あのちょっと奥で話しましょうか。」と店長は優介を奥へと案内した。
「実は、水城君はここだけの話しですが、数日前、うちにきた強盗に襲われまして、事件は未遂に終わり、犯人はすぐ逮捕されたんですが。あの言いにくいんですが、そのとき、その犯人に刺されてしまってK病院に入院しているんですよ。」
「・・・・・・。」優介はあまりのことで言葉が出ない。
それは一年前、優介も入院していた病院だった。
「それで、俊の様態は?」
「・・・・・・。」
「奇跡的に命はとりとめたんですが、その・・・・・。」
「その~なんですか。はっきりおっしゃって下さい。」と優介。
「その~。未だに昏睡状態でして。」
優介は目の前が一瞬暗くなるようだった。妹になんて説明したらいいんだ。でも知らせなきゃ。24日に決して俊が現れることはない。もしかしたら、永遠の別れになるかもしれない。
「教えてくださってありがとうございました。」と優介。
「いえいえ。あの~ 水城君の大事な人って?」と店長。
「妹は、俊の彼女だったんです。」
「そうですか・・・。」と店長。
優介は、コンビニを出ると急いで、妹に電話した。
「あっみわか。あのな途中で切るなよ。落ち着いて聞け!!俊がな、K病院に入院してる。コンビニでバイトしてただろう。そこで強盗にあって刺されたんだ。俺は急いでK病院にいく。お前も仕事終わったら、来い。じゃあそこで。」
「・・・・・・。」みわはなにもしゃべらない。明らかにショックを受けているようだった。
「俊君。」みわは、俊がいるK病院へとやって来た。すでに優介がそこにいた。
「俊君。」大声で、呼びかけても返事がない。
「眠ってる見たいだろ」優介がぽつんと言った。
「俊君。わたしね24日にあなたに会いにいくとき、私、間違ってたこと伝えるつもりだった。」
「私にとって俊君は大切な存在って伝えて、許してくれるなら・・・恋人同士に戻りたかった。」
「少なくても終わりにしようなんていうべきじゃなかったって。これからっていうときに別れを切り出すなんて、あのとき、私父のことで精一杯だった。気が動転してたの。でもね。しばらく父親を看病するから、少し待ってっていうべきだったって。」
みわの目に涙が・・・
「わたしってバカね。ほんとに・・・。あなたはわたしの大切な人。」
「ううん。私、私、あなたのこと愛してる。心から愛してる。かけがいのない人。」
「変わりになる人なんていない。本当はずっと思ってた。父を看病しているときもあなたのこと。毎日考えてた。あなたが今何してるのかって、」
「この町に戻ってきたのだって、あなたに会いたいから。あなたがいなくなって。」
涙があふれて止まらない。
「あなたがいなくなって、不幸になるのは私。」
「私ってばかね。そんな大切な人。お別れをいってしまった。24日ね。わたし気持ち全部伝えて、もし俊が、そんな私でも受け止めてくれるならって思ってた。勝手な女ね。」
「みわ、おまえ。そこまで俊のこと想ってたのか。」と優介。
「うん。俊とずっと一緒にいたい。愛してる。心から愛してる。これがわたしの気持ち。」
「俊お願い目をあけて、あけて欲しい。声をきかせて、話しをして、それだけで、わたしうれしいの。」
みわの気持ちがあふれ出す。そして、ねている俊の体の上でその布団のカバーの上で、号泣するみわ。もう言葉にならない。
病室にはみわの泣き声だけが響いていた。
それに俊に付けられている人工呼吸器の音。
その時
その時だった。俊に取り付けられている機械が、その変化をとらえていた。
みわの声に反応するようにピク、ぴくっと脈が変化をする。
そして奇跡は。
奇跡は起こった。
俊が、昏睡状態から起き上がろうとしていた。
泣いているみわの声に反応するように。俊が目を開けた。
それに気がついたのは優介だった。
「みわ!今俊が目を開けたぞ、先生呼んでこい、こんな時間に先生いないか。まず看護師さん、ナースコールで呼ぶか、ナースコール押そう。」ここはK病院のICU(集中治療室)なので、すぐ横にナースセンターがあった。だから看護師さんを呼ぶのは簡単なことだった。
優介もびっくりして気が動転してしまったのだ。
「俊。俊君。」
水城 俊は意識を取り戻してから、驚くように回復していき、水城の両親はもちろん、周りのすべての人を驚かしていた。まさにそれは奇跡だった。もちろん、そばにはいつも、みわが寄り添っていた。
「みわ。そばにいてくれてありがとう。」と俊。
「あのさ、聞いてくれるかな。俺、長い夢を見てた。その夢に、小さな男の子が出てきたんだ。」「3才くらいの。それで、その男の子がいうんだ。『お兄ちゃん、まだ死んじゃだめだよ。お兄ちゃんにはまだやることがあるはずでしょ。僕、みわちゃんと約束したんだ。すてきなお嫁さんになるようにってね。お兄ちゃんがみわちゃんをすてきなお嫁さんにしてあげるの。だから死んじゃだめ』」
「その男の子が何度も何度もいうんだ。それで君は誰って聞くと、『僕はクリスマスの天使。
ある人はキューピットとも呼ぶよ。』って答えた。白い服の男の子。『僕はみわちゃんに会ってるよ』っていうんだ不思議な夢だったな。」と俊は意識を失っている時の話をみわにしていた。
その話を聞いて、みわは3才の時、不思議な少年にあった記憶を取り戻していた。
「そういえば、3才のとき公園で、『クリスマスの天使』っていうこと遊んだおぼえがある。まさか、その男の子が俊の夢の中に現れるなんて、それ本当の話なの。」とみわは驚いたようにそういった。
「クリスマス・イブには、間に合わなかったし、こんなことになっちゃって、奇跡なんて起こらなかったし、みわは信じないかもしれないけど、俺ともう一度、やり直してくれないか?」と俊はみわの気持ちを確かめるように言った。
少しの沈黙。そしてみわは言った。
「わたしね。奇跡を信じる。そして、俊と共に未来を歩んでいきたい。これもお父さんとお母さん、そして天使さんのおかげね。」
「奇跡って、人を愛するときに本当に起こるのね。私これから俊と共に生きて行きたい。私は俊のことが好き。」
「・・・・・・。」
「俊。しゅーーん。あれーー泣いてんのもしかして。」
「ばか。きずが痛いんだよ。」と俊は強がった。
「みわ。大好きだよ。愛してる。」
「わたしもよ。俊。心から愛してる。」
目が合う2人。互いに唇を求め合う2人。キスを重ねた。
「全く2年つづいて、とんでもないクリスマスになったな。でも俺にとっては最高のクリスマスだ。」と俊。
「これから、たっぷりお祝いしてもらうよ。クリスマス」とみわ。
病室に2人の笑い声がひびく。
これが俺、水城 俊の「クリスマスの思い出」いや「クリスマスの出来事」生涯忘れない出来事。大切な人と出会えたとき、人はそのことを忘れない。
「みわ。心から愛しているよ。」