2008/12/10(水)
LEONです。
LEONです。
先日読み終わった京極夏彦さんの百器徒然袋 風 面霊気 薔薇十字探偵の疑惑
についてアップします。
3.面霊気 薔薇十字探偵の疑惑
面霊気
鳥山石燕『画図百器徒然袋』より
優れた面が古くなって魂を宿した付喪神(器物が変化した妖怪)であり、
持ち主に対して大切に扱ってくれるよう頼むとする説もある
についてアップします。

鳥山石燕『画図百器徒然袋』より
持ち主に対して大切に扱ってくれるよう頼むとする説もある
男なのですが、彼はひとことでいうと凡庸な男であるという設定になっています。
この凡庸ということに関して面白く書かれているので引用します。
引用開始
僕は取り分け賢くないが、それほど愚かでもない。凡人というのは突出して優れても
いないが、格段に劣ってもいないと云う意味なのだ。それが本当のことなのかどうか
は別として、そう思うことによって安定を保っている人種をこそ凡庸と呼ぶのだと思う。
自分は他人より優れてはいないんだけれども、そんなに馬鹿でもないだろう、決して
誉められたものでないけれども、貶されもしない筈だ。---と、その辺で人生に手を
打つ人間こそが凡庸なのだ。これだけは誰にも負けない自身があるとか、これだけは
絶対に駄目だとか、そうした部分を自分の顔として持っている人間は、自信のことを
凡庸だなどと思わないだろう。
引用終わり
さて、物語は【僕】が友人近藤の家の片付けを手伝った時に出てきた【面】をもって
青山の骨董屋【待古庵】を営む今川を訪ね、品定めをしてもらうところから始まります。
この【面】は【能面】のようだがいかにも古い。能の歴史より古い時代の能面だと
云うことになると、どうにも矛盾していると今川は悩み、このことを【猪】と【豚】の
例を引いてその矛盾を説明します。これが結構面白いのです。
いないが、格段に劣ってもいないと云う意味なのだ。それが本当のことなのかどうか
は別として、そう思うことによって安定を保っている人種をこそ凡庸と呼ぶのだと思う。
自分は他人より優れてはいないんだけれども、そんなに馬鹿でもないだろう、決して
誉められたものでないけれども、貶されもしない筈だ。---と、その辺で人生に手を
打つ人間こそが凡庸なのだ。これだけは誰にも負けない自身があるとか、これだけは
絶対に駄目だとか、そうした部分を自分の顔として持っている人間は、自信のことを
凡庸だなどと思わないだろう。
引用終わり
青山の骨董屋【待古庵】を営む今川を訪ね、品定めをしてもらうところから始まります。
この【面】は【能面】のようだがいかにも古い。能の歴史より古い時代の能面だと
云うことになると、どうにも矛盾していると今川は悩み、このことを【猪】と【豚】の
例を引いてその矛盾を説明します。これが結構面白いのです。
引用開始
『例えば---猪と豚を想像して欲しいのです』
これまた面相に似合った珍妙な喩えである。
『猪と豚は似ているのです。』
『はあ、まあ似てますでしょ。
・・・後略・・・』
『・・・前略・・・
豚は家畜化した猪だと、そう皆が認識していたと、そう思ってください』
『思いました』
『猪は豚より古いことになるのです』
『そりゃ、そうなら古いでしょうね』
『ところが、ここで突然、野生の豚が発見されたらどうでしょう』
『は?』
『野豚です』
『その、野豚とは家畜が野生化した豚と云ういみですか?それとも猪とは別に、昔から
存在したものだと?』
『存在した可能性もある、とお考え下さい。勿論、豚が猪に似ているように、野豚と猪も
似ている訳です。でも、野豚は、猪よりいっそう豚に似ている訳です』
『はあ、それが似方が違うと云うことですね』
『はい、その場合は豚は猪を家畜化して品種改良したものではなくて、猪に似た野豚を
改良したもの---と、云うよりもですね、豚は最初から豚だったと云うことになってしまう
可能性があるのです』
なる程、何となく解った。
『その場合、野生の豚は、家畜化した猪が豚になって後に再度野生化したと云うことに
なるのです。この場合、猪が豚になったと云う定説、と云うか俗説は覆らないのです』
そうなるか。
『それでは、偶然というのは』
『猪とも豚とも関係なく、凄く豚に似た動物が昔から自然界に偶然いた---と云うことに
なるのです』
『は?家畜化した猪にそっくりの、全く別の動物が、元からいた---と?』
それで偶然と云う訳か。
今川はない顎を伸縮させて頷いた。
これまた面相に似合った珍妙な喩えである。
『猪と豚は似ているのです。』
『はあ、まあ似てますでしょ。
・・・後略・・・』
『・・・前略・・・
豚は家畜化した猪だと、そう皆が認識していたと、そう思ってください』
『思いました』
『猪は豚より古いことになるのです』
『そりゃ、そうなら古いでしょうね』
『ところが、ここで突然、野生の豚が発見されたらどうでしょう』
『は?』
『野豚です』
『その、野豚とは家畜が野生化した豚と云ういみですか?それとも猪とは別に、昔から
存在したものだと?』
『存在した可能性もある、とお考え下さい。勿論、豚が猪に似ているように、野豚と猪も
似ている訳です。でも、野豚は、猪よりいっそう豚に似ている訳です』
『はあ、それが似方が違うと云うことですね』
『はい、その場合は豚は猪を家畜化して品種改良したものではなくて、猪に似た野豚を
改良したもの---と、云うよりもですね、豚は最初から豚だったと云うことになってしまう
可能性があるのです』
なる程、何となく解った。
『その場合、野生の豚は、家畜化した猪が豚になって後に再度野生化したと云うことに
なるのです。この場合、猪が豚になったと云う定説、と云うか俗説は覆らないのです』
そうなるか。
『それでは、偶然というのは』
『猪とも豚とも関係なく、凄く豚に似た動物が昔から自然界に偶然いた---と云うことに
なるのです』
『は?家畜化した猪にそっくりの、全く別の動物が、元からいた---と?』
それで偶然と云う訳か。
今川はない顎を伸縮させて頷いた。
引用終わり。
ん~ん。面白い議論です。