量子コンピュータとは?⑤
・コンピュータ上の必要なくなった大量のゴミ情報を保存するには余分な回路が必要になる。
そして、それには対価がかかる。
1960年代初め、ロルフ・ランダウアーという物理学者が、レジスタからビットを消去するごとに
微量の熱(エネルギーロス)が生じることを証明した。
プロッセサの誤作動を防ぐには、この熱を取り除かなければならない。
それゆえ、我々はコンピュータのファンの音に悩まされ、また、冷却装置も必要としてきた。
今のところコンピュータの効率性は低いので、ビット消去によるエネルギーロスはほとんど
問題にはならない。
それよりも、電子が細い導線を通るときの摩擦熱や、ハードディスクのモーターの回転から
生じる熱のほうが圧倒的に多い。
チップが小さくなって配線がもっと密になれば、熱の発生量も増大する。
技術者は熱を素早く放熱させたり、熱の発生量そのものを抑えたりする方法を探している。
しかし、いくらモーターをなくして抵抗ゼロの超伝導線でチップを作っても、ビットを消去するごとに
必ず熱が発生するというランダウアーの原理には、どうしても立ち向かわなければならない。
物理法則がそれを要求するからだ。
この熱の発生をなくすには、情報の消去を諦めて、中間結果をすべて保存するしかない。
回路が小型化し、冷却技術が限界に近づくと、技術者はこの最後の熱源を取り除くという
問題に直面せざるをえなくなる。
量子コンピュータとは何か (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
