小林由依は4月の冷たい雨に打たれながら、薄暗い街灯の灯る住宅街を走っていた。
目の前には、小林の手を引いて走る渡邉理佐。
「待てや!」
後ろから響くのは、2人を追いかけてくる厳つい男達の怒声。
小林は引っ張られるがままに、今にも脚が絡まりそうな程のスピードで走り続ける。
おかげさまで呼吸は苦しくて、心臓は暴れ狂っていた。
「こっち入ろう!!」
ふいに、腕を左方向に引っ張られ、薄暗い路地裏へと引き込まれた。
反動で、小林は理佐の胸の中にすっぽりと収まる。
「ちょっ、え、!?」
慌てて離れようとするも、
「静かに!」
「……っ!!」
理佐の手によって再び胸の中に引き戻された。
「いいから、このままで。アイツらに見つかるから動かないで。」
耳元でそう囁く理佐に、小林の心臓の動きは余計に激しさを増す。
この人とは今朝会ったばかりで、因縁があったはずなのに。
どうしてこんなことになっているのか。
それは12時間程前まで遡る。
最悪な出会いと共に始まった高校2年生の春。
でもその出会いが、全ての始まりだったんだ。