菅井友香さん生誕記念小説です。
酔っ払った菅井さんと、それに翻弄される守屋さんです。
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私たちは今日、付き合って3年を迎えた。
何日か前、記念日はどうするかの話をしていて、今年は家でパーティーでもしようか、と約束していた。
一足早く仕事を終えた私は、その準備をせっせと進める。
気合い入れてケーキなんか作っちゃって、友香が驚く顔を想像しては顔が綻ぶ。
早く帰ってこないかなぁって時計を見つめて待ち焦がれた。
そこへ鳴り響くスマホの通知音。
ワクワクしながらLINEのトーク画面を開いた瞬間、私のテンションは急降下した。
「茜、ほんとごめん!!どうしても断れない接待入っちゃって、今日帰り遅くなるから先に寝てて!」
接待?
それは断れないの?
てか、私との予定をドタキャンしてまでやらなきゃいけないことなの??
こんなに楽しみにしてたのに。
あとは友香が帰ってくるのを待つだけってところまで準備された食材達を取り残し、私は寝室に入る。
「友香のバカ。」
静かな部屋でひとり呟く。
倦怠期ってやつなのだろうか。
最近の友香の頭の中は仕事ばかりで、私に構ってくれることも少なくなった。
気持ちは分かる。
新人でも無くなり、色々大事な仕事を任せてもらえるようになる時期だ。
仕事が大切なことくらい、分かってる。
でも…。
今日だけは、私の方を優先させて欲しかった、って思うことは我儘なのかな?
「分かんないよ…。」
そのままベッドにダイブし、怒りなのか悲しみなのか分からない感情にまかせて涙を流した。
気付けば私は、眠りについていた。
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玄関のドアが開く音で、私は目を覚ました。
「たらいまぁ〜」
友香の声が寝室にまで響いてくる。
ああ、これは酔っ払ってるな、ってのが声だけで分かった。
「茜〜帰ったよ〜。茜〜。」
寝室のドアが開き、声が段々と近づいてくる。
いつもなら無視することは無いんだけど、今日は違う。
寝たおかげか怒りはおさまっていたけど、ちょっとした意地があった私は、寝たふりをした。
「寝てるの?今からでもパーティしたかったけど…寝てるならしょうがないか。」
諦めたのか、友香の足音が遠ざかっていく。
寝室のドアが閉じられる音を確認してから、私は目を開けた。
「あ…。」
ドアの前には友香が立っていて、目が合ってしまう。
部屋から出たフリをした友香の方が一枚上手だったらしい。
「やっぱり起きてたんだ。」
そう言って友香は口を尖らせる。
不満そうな顔をしているけど、目はトロンとしていて、少し呂律が回ってない。
正直、可愛いと思ってしまった。
ダメだダメだ。今日ばかりは、可愛さにかまけて許してはいけない。
「友香がドタキャンするから、不貞寝してたんだよ。」
「茜…ほんとにごめんね…。」
赤らんだ顔で申し訳なさそうに謝る友香に、私は気持ちをぶつけた。
「ずっと楽しみにしてたんだよ…?」
「私も楽しみにしてた…。でも、大事な商談相手だったから外せなくて…。」
「最近、仕事ばっかりだね。家に帰ってからも仕事してるし、全然構ってくれないし…。私のこと、どうでもよくなっちゃった?」
ついつい、溜めていた不満をぶつけてしまう。
面倒くさくて我儘な奴になってしまう。
でも友香は、そんな私にさえも真摯に向き合ってくれた。
酔っ払っていても、誠実さは失われなかった。
「茜、私は茜のことほんとに大切に思ってるよ?確かに最近忙しくて、茜と居られる時間も少なくなっちゃったけど…、茜に対する気持ちはずっと変わらない。」
真っ直ぐと見つめるその瞳に、嘘は無いと思った。
「ほんとに…?信じていい?」
「うん。信じて。」
「じゃあ信じる。」
私がそう言うと、友香は安心したようにふにゃっと笑った。
「茜が良ければ、今からでもパーティしない?せっかく作ってくれたんだし…。」
まるでオモチャをねだる子供のような友香の表情に、私は負けてしまった。
時刻は12時手前。
ようやく2人の記念日を祝うパーティが開催された。
グラスに赤ワインを注ぎ、2人で乾杯する。
友香はビールを飲むかのように、ワインをグビッと一気に飲み干してしまった。
「え、そんなに飲んで大丈夫なの?もう結構飲んでるんでしょ?」
「だいじょぶ、だいじょーぶ。」
すでに結構出来上がっている友香は、次々に酒を飲み干し、料理を食べ尽くしていく。
「えへへ。茜の料理おいしーね。」
友香はお酒を飲むとずっとヘラヘラしてるし、精神年齢がめちゃくちゃ下がる。そして、大胆になる。
今日は特に…
「あかね、ケーキ食べさせて?」
横に座る友香はこちらを向いて、子犬のような目をして待っていた。
もし友香に尻尾があったらブンブン振ってるんだろう。
目はさっきよりもトロンと垂れていて、ほっぺは相変わらず赤らんでいる。
ズルいんだよなぁ。
普段は絶対にこんな風に甘えてこないくせに。
自分が可愛いこと、わかってる?
私は大して酔ってないから、平常心を保つのが大変なんだけど。
「はい。アーン。」
ドキドキしていることを悟られないように、少し冷たい声色で言いながら、大きく開けた友香の口にケーキを入れる。
「んんん。おいしい。」
満足げにケーキを食べる友香は、5歳児そのものだった。
この時ばかりは友香の方が年上だってことを忘れて、保母さんにでもなった気分だ。
「あかね、大好きだよー。」
「うん。そういうのはシラフの時にもっと言って欲しいな。」
「え〜言ってるよ〜。」
「言ってない。恥ずかしがって言ってくれない。特に最近は。」
私がそう言うと、友香は「そうかなぁ。」と口を尖らせ、ケーキを頬張る。
少し意地悪だったかな、と思い友香の顔を見ると、5歳児友香は口に生クリームを付けていた。
「友香、口に生クリーム付いてるから。」
そう言って私は、友香の口元に付いた生クリームを指で拭う。
すると友香は、急に動きを止めて私の方をジッと見つめてきた。
今度は何?
5歳児かと思っていた友香が急に大人な表情を見せてくるもんだから、私の心臓は制御できない程に暴れ狂う。
何秒間見つめ合ったのだろうか。
甘く絡み合った2人の視線は、友香のキスによってほどかれた。
短い、唇を重ねるだけのキス。
唇を離すと、友香はどこか気だるそうな艶のある目でこちらを見ていた。
その目が、私の固められた心をとろりと溶かす。
「友香、愛してる。」
そう言って私は、もう一度友香に唇を重ねに行った。
唇に触れては離し、腕を首に絡ませる。
「ねぇ、友香は言ってくれないの?」
私が聞くと、友香は
「何を?」
といたずらに微笑んだ。
「とぼけないでよ。分かってるくせに。」
「ふふ。」
今度は自然と舌を絡ませていた。
フワッと赤ワインの香りが口に広がる。
そのキスは、私から思考を奪った。
ただ、本能の赴くままに唇を重ねていく。
そのまま、私は押し倒された。
「茜…好きだよ。」
「もっと。」
「…愛してる。」
赤らんだ顔で欲しい言葉をくれた友香の頬に手を添える。
頬は凄く熱くて、耳まで赤くなってて、ああ、これは酔いではなく恥ずかしいんだなって気付いた時、愛しさが込み上げてくる。
何年経っても、たとえ酔っ払っていても、想いを伝えるのは恥ずかしいらしい。
私たちはそのまま一晩中、お互いの愛を確かめ合った。
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翌朝
「頭痛い〜。」
友香は2日酔いに苦しんでいた。
「飲み過ぎなんだって。」
「ん〜〜。でも昨日楽しかったね。」
「昨日のこと覚えてるの?」
「なんとなく覚えてる。だから茜の顔見るの恥ずかしい。」
そう言ってまた頬を赤らめる友香が愛しくて。
ああ、やっぱり好きだなって。
ピンク色に染まった友香の頬に、触れるだけのキスをした。