今回は偶然立ち寄った古本売り場で見つけた、お気に入りの作家さんの初めて読むお話について。
題名に魅かれ、帯の「人生、まだ、続いていくから。」という文句に魅かれ、裏稼業コンビのお話というところに魅かれて何気なく手に取った一冊。
裏稼業、そういうお話は割と好きだったり。
何よりも、溝口さんと各章に登場する相棒やその他の人物との会話、掛け合いが読んでいてとても楽しい。なるほど、と感心するような場面もあれば、思わず笑ってしまうような場面も。
でも、溝口さんの一番の相棒は岡田だと思う。作中で溝口さんも「お前のことは嫌いじゃない」と言っているし良いコンビなんじゃないかと。
一章で、溝口さんが岡田に罪をなすりつけたときも最初はええ...と思ったけれど、後の五章で「何で、岡田にあんなことをしちまったのかな」と嘆いている場面もあり、それなりに大切に思っていたんだなと。
一章で岡田がいなくなった後も、心のどこかで実はまだ生きていて、また登場してくれるのではと期待しつつ。
ただ三章では、検問があり大変な状況にもかかわらず、ああでもないこうでもないと、被害者側の女性まで参加して言い合っている場面は読んでいてとても面白かった。
単純でお気楽に見えて、実は結構鋭い溝口さんはすごいしかっこいい。
第四章は岡田の小学生時代のお話。実はここでもう溝口さんと会っているという。後に、溝口さん本人も言っていたけれども、二人は約二十年ほどの関係だと。
二十年も前のことを覚えていた溝口さんにも、その後再会したことにも感動。でも、岡田はそのことには気がついていないようで。溝口さんが気がついたのも岡田がいなくなった後のこと。
この章は岡田の小学生時代の同級生の目線で回想として語られている。この章を読んでいる時分は気がつけなかったことだけれども、岡田のことを探していたんだなと後でわかった場面。
第五章は五編の中でも特に好きな章だった。
自分も高田と全く同じ思考をしていた、というかほとんどの人がひっかっかったのでは。白衣と花言葉のミスリードは大きい。
まさか、溝口さん本人が主犯だったとは。でも、その理由が岡田の仇っていうところに胸が熱くなる。
それから、この場面で溝口さんが言った「意味とか関係ねえんだよ。八分でも十分でも、飛べるなら飛ぶんだよ。損得じゃなくて」というセリフが好き。冒頭では損得でものを考えていた溝口さんが「損得じゃなくて」と。すごく好き。
高田もなんだかんだ言って溝口さんに不利になることはしないし、助けようとまでしているし。
この章は本当に好き。
最後はどうなったのかわからず仕舞いで終わってしまう。でも、そういう余裕を持たせた終わり方は嫌いじゃない。
読み終わり呆然としたまま本を閉じる、表紙の題名が目に入る、もし連絡があったらと問われ溝口さんが言った「その時は、どこかでずっとバケーションでも満喫してやるよ。俺の人生、残りは夏休みだ」というセリフ。
あぁ、連絡来たんだろうなぁ。
そして、これは友人の考察なのだけれど、先生のお見舞いに来ていたヘルメットの男こそが岡田なのでは、と。
なるほど、そういう考え方もあるのか。もし、そうなら二人は結構近くにいたことになる。岡田の方はともかく、溝口さんは気づかずに。それはそれで歯がゆいというか。
このお話にはたくさんの名言が出てくる。一章で岡田が言っていた「残り全部バケーション」というセリフも良いけれど、個人的にはこれが一番好き。二章より。
「まぁ、どうにか耐えて、生き残れ」
なんというか、溝口さんらしいなぁ、と思えるセリフ。簡潔で好き。
いろいろ書いたけれど、とにかく伏線だらけで、読み返せばまた違う目線で楽しめるそんなお話。
やっぱり溝口さんと岡田のコンビが一番。