続き
息子は昔から、出かける直前に必ずシャワーを浴びるのが習慣だった。
今回も同じ。結婚式に出る為に友達と17時半に待ち合わせをしていた。
約2時間程前、息子はいつものようにシャワーを浴びるつもりだったのだろう。
シャワーを浴びようとした時に何らか身体に異常が起き、そのまま座り込むようにバスタブに身体から覆い被さっていたという。
シャワーのお湯は発見されるまで、
24時間以上出たまま、息子に掛かっていた。
全身から脱力したのだから、案の定バスルームは血液や汚物で汚れ、悪臭も出ていた。
私に気を遣って、主人が掃除するつもりでいたが、これも息子の体の一部と思うと、汚いとも臭いとも感じず、どうしても私が何とかしてやりたかった。
私は、私が息子にしてやれる最後のお世話と思って風呂中を必死で洗った。
平気ではない。
洗いながら、警察からの話を思い出し、見てもないのに頭の中で、勝手に息子の最期の状態が映像化されてしまう。
でも、それでもいい。
小さい頃オムツを替えて来たように、一つ一つ拭いとるように洗い流した。
そして、跡形もなく綺麗にした状態で、
娘を呼んだ。
部屋に残された息子の持ち物は、潔く最初からなかった事にした方がいいと思ったので、一部を除いて殆どを処分する事にして3人で整理した。
衣類を扱う時は、息子の匂いがするので、わざと息を止めた。着けていたであろう香水の瓶も、嗅がないようにした。匂いはいつまでも記憶に残ると聞いた事があったから・・。
近くのホテルと自宅を数日往復した。
2日を費やして遺品を処分。
3日目、4日目と、会社の関係者や、通報してくれた友人達と面談した。
「お母さん、今度の部屋はめっちゃ綺麗だよ!」
「風呂場、乾燥機能までついてるよ〜」
「おい!妹よ!、はよ遊び来い。ただで泊めてやるぞ〜」
就職が決まって、このマンションに移って来た時は、嬉しそうに話してくれてた・・ほんの1年前の話だったのに・・
皮肉にもこんな形で、最初で最後となって訪れた息子の部屋・・
会社に処分して貰えるようになった大型家具やカーテンなどは残して去る事にした。
玄関を出る時は、まだ息子が部屋に居るような気配さえした。
胸を締めつけるほどのたまらない切なさは言葉にならない。
大都会東京は、いい街だと思う。
でも息子は、しんどいけどあと1.2年この地でキャリアを積んで、近い将来は故郷に戻りたいと言っていた。
真面目で堅実に取り組もうとしていたことが何故、彼の命の灯を消してしまう事にならなきゃいけなかっだのだろう・・
続く