時刻は6時30分。
ふと、丸井の家でニコニコ動画を見、そろそろ帰るかと沙遊と
話しているところだった。
自分のケータイを見て気付く。
父から留守電が入っていた。
そろそろ帰って来い、の合図だろうか。
甘んじた考えが新藤の胸にはよぎっていた。
「早く帰ってこないとメシ抜くぞ」
先ほどのケーキで腹は満たされたが、
父の声音がドスを利いていたのであたしは直ぐ帰らなくては、
という使命感に似たものを抱いた。
今年何回目か分からない降り積もる雪の中
止めてあった自転車のサドルが濡れているので立ちこぎで
街灯の少ない路地を抜け、
そして信号に引っかかる。
焦る気持ちを抑えようと被っていたフードがずれていたので
被りなおす。 どことなく隣のフードを被っている自転車に乗った
お兄さんも寒そうだ。
信号が青に変わる。
すぐさま走り出すと止まっているときは気付かなかったが
雪が少し霰に変わっていたようで自転車のスピードを出して
いる私の顔に当たって痛かった。
半分死にそうになりながらも
なんとか帰ったあたし。
「ただいまなさい!」
ごめんなさい と ただいま が混ざってしまった。
やっと帰ってきたかと言うような顔をする父に
雪が降って、それが霰っぽくて、顔に当たって痛かった!
と文脈がなっていない言葉で伝えると、
「楽しそうだな」
と皮肉を言われた。
おわり。