ヒトラーの強硬な態度に対して、チェコスロバキアは
総動員令を発しました。
チェコと安全保障条約を結んでいたフランス軍も
これに呼応して動員令を発します。
イギリス海軍にも動員令が下り、緊張が一気に
高まりました。
戦争の緊張は世界に広まりました。
20年前の第1次大戦の記憶が生々しいイギリス
では、人々は毒ガスや空襲の恐怖におびえました。
■シュテファン・ツバイク (Stefan Zweig) / 柴田秀勝
あの日々の状況は絶望的であった。突然労働者たちが現れ、
ロンドンの方々の公園に、そして特にドイツ大使館の前に、
せまり来る空襲に備える壕を掘った。
人々は真剣な考え込んだ面持ちで歩いていた。
私たちは人間であふれる街路と家並みを密かな感慨を
もって眺めるのであった。
明日は既に爆弾がそれらの家や通りを粉砕してしまうのではないかと。
そして扉の中では人々がラジオのニュースの時間に、
立ったり座ったりして耳を傾けていた。
どの人にも、どの瞬間にも巨大な緊張が全土を覆っているということが、
目には見えなくともはっきりと感じられるのであった。