~愛された記憶⑨~



それから……

帰りの車の中はなんとなく気まずい雰囲気に包まれていた……

ような気がしていた

(……と感じていたのはワタシだけ…?)



アナタはごく普通にワタシに話しかける


でも、ワタシはさっき見た車の中の光景が、頭から離れずに……
どことなくうわの空で……


「Mどうしたの? 疲れた?」

「え!? う、ん…ううん……」


どっちつかずの返事をする


(アナタは…なんとも思ってないの? さっきの光景……?)


「朝も早かったしね…あんなにはしゃいでたからね、Mは…」
「眠くなったら寝ててもいいよ」

「あ、ううん、だ、大丈夫だから」
「ボーっとしちゃってごめんね」
「Nはずっと運転してるのに…」

「僕は大丈夫、眠くなったら…ちゃんと言うから安心して」



そう言ったアナタの横顔を、ちらっと盗み見る
アナタはしっかりと前を見て、優しく微笑んでいた


その後もアナタはごく普通に、
気まずい雰囲気など感じさせることもなく話し、
安全運転を続けていた



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*



もう少しで着いてしまう……

今日待ち合わせをした場所に……


ワタシは心の中で、『まだまだ着かなければいいのに…』
そんなことを思っていた

(……まだ帰りたくないな、一緒にいたい…)

ワタシがフーッと大きく息を吐いた時だった



「お風呂に入ってこうか?」


アナタは突然、そんなことを言い出した


「え!?お、お風呂!?」

「うん、だってシャワーだけじゃベタベタしてるでしょ?」


確かに…
帰り際、海の家の簡易シャワーで砂を落とす程度に浴びただけだったから、
スッキリしたわけではなかったけど……

(で、でも、お、お風呂って…!?)
(ま、まさか……ホテル!?)


瞬時にいろんなことが頭の中をかけめぐり、
さっき見たあの光景が…
ワタシの妄想をかきたてた


「で、でも…お風呂って、そんないきなり……」

「○○のお風呂」

「え……? ああ……○○の……」
(○○って…そ、そうだよね……)


ワタシは、ホッと肩をおろす


「何? Mはどのお風呂だと思ったの?」

「へ?ど、どの…って……?」

「なんか、すごく焦ってたみたいだから…」
「…Hなことでも考えてたのかなって?」

「!?」


アナタは声を殺しながら、クックッ…と笑った


「もう…Nなんて知らないっ!」




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*




そして数分後―――


アナタの運転する車はある場所に着いた


今日、待ち合わせをした場所…

そこは、お風呂のあるレジャー施設○○の駐車場だった



今思えば初めて会った日も、
友達と行った海の帰りに、ここでお風呂に入った


海の後のお風呂…

その頃のワタシたちには
それが、ごく自然の流れだった……