~愛された記憶④~





それから1週間―――


私はあの日の出来事を忘れられずに過ごしていた


(嘘に決まってる…)
(からかわれただけ…)
(だって、連絡先も名前も…何も言わなかったし…)

そう納得したい自分と

(でも、もしかしたら…)

心のどこかでそう思う自分がいた


ほんの一瞬の出来事だったから…
その人の顔がはっきりと浮かんでこない
だけどなぜか…
その人が乗っていた車だけは
鮮明に覚えていた


曲線を描くシルバーのボディーが……
西日を受けて、金色に輝いていて……
とても綺麗だったこと……




日曜日の朝―――


天気は快晴
こんな日はまさしく海日和…

まだ朝の空気は、肌に触れると冷たいと感じた



AM6:40―――


「海に行ってくる……」

私はそう言って、家を出た



まだ、答えが出ていたわけではなかった


「本当に来てる?」
「まさか…ね」
「来るはずないよね…」


私は、そんな自問自答を繰り返しながら、
半信半疑のまま、約束の場所へと向かった



坂を上りきるとその場所が見えてくる

「あ……」

視線の先には見覚えのある車があった

「いた……」

1週間前、私が立っていたあの場所に
車が1台横付けてあった

私は空いている場所に車を停めて、荷物を持って
その車の方に歩いていった