～グッドエンド～
貸し切りのバスに乗って数十分ほど経ったころ、猛獣ゾーンへと差し掛かった
「わっー！」
ガルルッ、と声を上げるライオンに驚き、繋いだままの手を強く握りしめた
「くくっ、怖いのか？」
身体を少しずつ寄せていく私に、総司さんはクスクスと肩を揺らす
「こ、怖いわけじゃ……ちょっと驚いてしまって……」
ライオンは嫌いじゃない
大人は恰好いいし、赤ちゃんはとても愛らしい
ただ、間近で初めて聞いた声に、過剰反応してしまったのだ
「窓の外には檻もついているし、窓を割って入ってくる心配もない」
「分かっているんですけど……」
「…びっくりしちゃって………」
苦笑する私とは違い、総司さんの表情はどこか楽しそうだ
「そうか、なら こうしていれば平気か？」
「…えっ！？」
繋がれた手をグッと引き寄せられ、私の身体は総司さんの胸元へと倒れた
「そ、総司さん…！？」
驚き、慌てる私を余所に、総司さんは楽しそうに告げた
「こうしておけば、驚くこともないし、安心だろう？」
すぐ側にある総司さんの顔を見上げ、言葉に詰まる
「で、でも……」
「いやか？」
「そ、そう言うわけじゃなくて……」
いつの間にか離されていた手……
その手は今、私の肩を優しく抱き寄せていた
（こうしていると安心する……）
（だけど、心臓はとても煩い……）
「ん？ どうした？」
至近距離で私を見下ろす総司さんは、視線を逸らすことなくじっと見つめている
口角を上げるその表情に、見覚えがあった
「……総司さん、からかってませんか？」
「いや？ そんなことはない」
目線を上げそう告げれば、クスクスと笑みを浮かべた
「ほらっ、もう！！からかわないで下さいっ！！」
ドキドキした分、恥ずかしくて声が大きくなった
肩に触れる手の力が弱まる
「くくくっ」
「…そんなに笑わなくても……」
密着していた身体に距離を開け、少しだけ上体を起こした
同じ目線で見つめあえば、総司さんは口元を緩める
「真っ赤な顔して睨まれても、全然怖くないからな」
「……睨んでないですから」
「でも、少し怒っているだろう？」
からかわれたことで、少しだけ拗ねてはいる
「くくっ、これじゃさっきとは真逆だな」
楽しそうに笑った総司さんの言葉に、自然と頬がほころんでいく
「本当ですね」
総司さんにつられるように、私も肩を揺らし笑った
相変わらず窓の外からは、ライオンの声が聞こえる
「もう大丈夫だな」
「…っ！」
「はい、もう大丈夫です」
気恥ずかしくて、はにかむように笑みを浮かべた
きちんと椅子へ座り直そうと、姿勢を正すが、身動きが取れない
「え…」
咄嗟に隣に座る総司さんへ視線を向けた
「そ、総司さん…？」
総司さんの腕は、私の肩に伸ばされたままだった
その大きな手が、再び私を抱き寄せた
「きゃっ！」
「別に離れることはないだろう」
「ここにはオレ達しかいないんだ」
再び近くなる顔……
総司さんの瞳がはっきりと私を見つめている
「…っす、少しだけなら…」
まっすぐ向けられる視線が恥ずかしい
目線を逸らし小さく呟けば、総司さんがクスリと笑った
「少しだけか……」
「…残念だな」
あ、またあの表情だ
「…あまり意地悪しないでください」
「……身が持ちません……」
きっと今の私は真っ赤になっているはずだ
恥ずかしくても、総司さんの言葉が嬉しすぎたから……
× × × ×
キリンを始めとする草食動物から始まり、猛獣ゾーンを見て回る
気づくと、いつの間にかバスは一周し終えていたようだ
「…ああ、もう終わりか？」
「え？」
「あ、本当だ…」
総司さんの言葉で気が付いた
窓の外には、ライトアップされたあの木々が見える
「早かったですね…」
「ああ、それに……思ったよりも楽しめたな」
総司さんも同じ気持ちだったようで、嬉しくて自然と笑みを浮かべた
「そうですね、楽しかったです！」
バスが静かに停車する
出入り口が音を立て開けば、もうこの時間は終わりだ
「……また、来ましょうね」
「気に入ったのか？」
「はい、とっても！」
「また総司さんと二人で…来たいです」
人並みの感想しか言えないけれど、総司さんは柔らかい表情で頷いてくれた
～グッドエンド fin ～
「イケない契約結婚」
(C)Arithmetic
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これ…グッドエンド？
ランキング100位～300位以内？
ノマエンと何が違うの？
草食ゾーンから猛獣ゾーンに変わったけど……
総司さん、猛獣に変身した？
うそ～～これで終わり……？
ＰＥで変身するの？
あ～モヤモヤする～～ヾ(｡｀Д´｡)ﾉ
