【妄想ガール】
眠らぬ街のシンデレラ~廣瀬遼一&…~





妖かしの夜⑯




ぐったりと私の腕の中でうな垂れる彼女を優しく抱きしめた


彼女の顔にかかった髪の毛を手で除ける


するとその目から一筋の涙が零れ落ちた……




「マリアさん………」
「……無理をさせてしまいましたね……」




私はその涙の跡を指でなぞり、まだ熱く 赤く上気した頬に唇を寄せた



私の瞳に映る彼女は穏やかで優しげな表情をしていた




(………いや、私がそう思いたかっただけなのかもしれない)





他に何もいらない…


全て投げ出してでも手に入れたい……


それほどまでに………


愛していた…………


私の最愛の人………






私は、もう一度彼女の頬に口づけると、



ベッドの下に落とした彼女の衣服に手を伸ばし、
その衣服を彼女に纏わせた


彼女の赤く上気した白い肌の感触を、ひとつひとつ確かめながら指を滑らせていく

その行為さえも、私にとっては至福の喜びでしかなかった―――








いつしか窓の外は、真っ暗な闇はすでに姿を隠し、
静寂の中、徐々に白みはじめていく



それは―――
この狂愛の宴の終わりを告げる鐘………


一夜限りの妖かしの夜は、もうすぐ終焉のトキを迎えるのだ……



目が覚めた時 貴女は……
それが……全て夢であったと、全てが幻であったと………


疑わずに信じることができるのだろうか…





貴女は確かに、私のこの腕の中で―――


私の愛を全身で受け止め、そして求めた……


たとえそれが妖かしだったとしても、私は………



(貴女を心から愛していた……)
(どんなことをしても、貴女の全てが欲しかった……)
(たとえ貴女に…軽蔑されたとしても………)




シャツのボタンをはめネクタイを締め正し、上着を羽織る



そして、最後にもう一度だけ、その柔らかな唇に触れると、
私は彼女に背を向けた







カチャ………

バタン………







⑰につづく……