【妄想ガール】
眠らぬ街のシンデレラ~廣瀬遼一&…~





妖かしの夜⑫



…side



誰もいないのを確認するために辺りを一瞥し、マスターキーを差し込む

サッと身を隠すように部屋の中に入ると、フーッと息を吐きネクタイを緩めた


シーンと静まり返った室内を、足早に奥へと進む


一番奥の部屋のドアノブに手をかけた


(このドアの向こうには……愛しい人が……)



カチャ……



薄暗い部屋の中で、すぐにその姿が目に映る


(私の愛する人……)



すぐにでも、抱きしめたい衝動に駆られかけよった

けれど……

あと少しで触れる寸前で、伸ばした手を止める


(ふっ、私としたことが……)
(冷静にならなければ……)



私は上着のポケットから、小瓶を取り出し
その小瓶に入ったドロッとした液体を中指に垂らす

そしてすぐに、その液体を
目の前の愛しい人の瞼にスーッとのばした



まだ、目を覚ます気配はない………



(やっと…やっと……この時が……)



私は、待ちきれずに唇を寄せた
乾いた唇を潤すように舌先を滑らせる
そして、優しくゆっくりと…唇を割り、舌を滑りこませた


彼女の唇は…思っていたとおり、柔らかくて甘くて……
私はしばらくの間、我を忘れてその唇の感触と、咥内の感触を味わっていた



「んっ……っ」


突然彼女が、切ない声を上げ身を捩る


(ふふ…そろそろ薬の効き目が切れるころですね)
(それでは始めましょうか)
(私たち二人の、今宵限りの禁断のパーティーを……)



私はゆっくりと、彼女の洋服に手をかけた
背中のファスナーをゆっくりと下ろしていく

肩から服をずらしそーっと脱がせると、だんだん白い肌が露わになっていく
脱がせた洋服をベッドの下に落とし、レースのランジェリーに触れる
そして……
それも全て取り去るとブラのホックを外した



(美しい……)



彼女の身体は、思っていた以上に白く滑らかで……
形の良い胸の膨らみ…
中心はピンク色に染まっている


私はもう、衝動を抑えることがことができなかった


自分も着ているものを全て脱ぎ捨てると、
彼女の肌に吸い寄せられるように、
全身にキスを落とし、手を滑らせ、舌を這わせていた……



次第に熱を帯びていく、白い肌……

彼女の口元からは、甘い声が零れてくる……


(私を感じてくれているんだね…)


眠りから覚めようとしている彼女の身体を、愛しむように愛..撫する

今、彼女は私の腕の中で……甘い刺激に身を震わせている
それだけで、私はなんともいえない幸せに包まれる


(もっと、もっと気持ちよくしてあげるよ……)
(今まで……貴女が感じたことのないほどの悦びを感じさせてあげる……)
(忘れられないほどの快楽を……)




その時、彼女の身体が大きく震え、
甘い吐息とともに目を覚ます
ゆっくりと目を開けると、その瞳は私をジーッと見つめていた

私は、優しい眼差しで見つめ返した

けれど……
彼女の瞳に私は映っていない
彼女の瞼に塗った秘薬が、視界をぼやけさせているのだから……


それなのに、
彼女の口から、私の聞きたくない言葉が発せられようとしていた


「りょうい……っ」



私は急いで、彼女の唇を乱暴に塞いだ


(今だけは、その名前を呼ばせない…)
(その唇から、その名前を発することは許さない…)
(今だけは、忘れさせてあげるから……)




私は何度も心の中でそう繰り返しながら、その思いを込めて
何度も何度も角度を変えては、舌を絡ませた

言葉を発する隙を与えぬように……
全てを忘れさせるように……


私は舌を絡ませながら、彼女の身体に手を滑らせていく
胸の膨らみに手を触れると、優しく包み込むように愛..撫する


その甘い刺激から逃れようと抗ってみても
その抵抗も、全て私を煽るだけのモノにしかならない


彼女の甘い吐息が次第に増していく


私は彼女の身体に覆いかぶさると、両手をベッドに押さえつけた



すると彼女は……
私を受け入れるように、私に身を委ねた………







⑬につづく…