【妄想ガール】
眠らぬ街のシンデレラ~廣瀬遼一&…~
妖かしの夜⑧
「マリアさん、先ほどのカードキーはお持ちですか?」
「あ、ええ…」
私はバッグから、部屋のカードキーを取り出すと皐月さんに手渡した
皐月さんは、手慣れた手つきでカードキーを差し込むと部屋の扉が開いた
「さあ、どうぞ」
「…ありがとうございます」
部屋の中に進むと、そこには綺麗な夜景が一望できる広い空間が広がっていた
でも、今の私にはその景色を楽しむ余裕がないほどに頭がグラグラする
そんな私の様子を窺うように、皐月さんはすぐにベッドルームへと案内してくれた
目の前には、大きすぎるぐらいのベッドが見える
「皐月さん…あ、あの…もうここで大丈夫ですから…」
「本当にありがとうございました」
「ふっ、……そうですか、ではごゆっくりお休みくださいね、私はこれで…失礼します」
皐月さんは、私がベッドルームに入るのを見届けると、その場を立ち去っていく
私はぼんやりとその後ろ姿を眺めていると、ふと、カジノのバーで感じたのと同じ違和感が胸をかすめた気がした
(なんだろ? この感じ……さっきと同じ……)
すると……皐月さんが急に振り向いた、と同時に体に一瞬緊張が走った
(!?)
「………」
「このカードキーは、遼一に渡しておきますね」
「………あ、はい……」
そう言い残し、皐月さんは部屋を出て行った
大きく息を吐き出す
緊張が解け、どっと体が重くなったような気がする
(はあ~疲れてるのかな……)
私は何も考えずに、そのままベッドに身を投げ出した
フカフカの羽毛に全身を包まれると、急激に睡魔に襲われる
私は服を脱ぐことさえも忘れ、スーッと深い眠りに落ちていった
× × × ×
その頃カジノでは―――
先ほどまでの緊迫した状況とはうって変わって、大きなざわめきが起こっていた
3人とも同役だったために、勝負はドローとなったのだ
「遼くん、お疲れさま…」
「珍しいね、遼くんがドローなんて……」
「ああ、んっとにな……」
タバコに火を点け、辺りを見回す
「未来、マリアは?」
「ああ、遼くん、あのね…」
「……そうか」
「うん」
「だいぶ、疲れてたみたいだよ……目なんかうさぎさんみたいだったから……」
「なんだよ、それ?」
「目が真っ赤だったってこと」
「ゆっくり眠らせてあげて」
「ああ」
すると、そこに皐月さんがやってくる
「遼一」
「ん?」
「今、マリアさんを部屋まで案内してきたから、これはお前に渡しておくよ」
皐月さんは、カードキーを差し出した
「悪いな、皐月さん…」
「いや、気にしなくていいよ、それより…」
「ドローだって? 珍しいんじゃないか?」
「……オレも、ヤキがまわったのかもな」
「もちろん、勝負がつくまで続けるんだろ?」
「ああ」
「楽しみにしてるよ」
「ふふ、遼くん、頑張ってね!」
熱い熱戦は、まだまだ続いていた
⑨につづく……