【妄想ガール】
眠らぬ街のシンデレラ~廣瀬遼一&…~




妖かしの夜③



そして、強引に私の肩を抱き寄せると、奥のバーコーナーへとむかった


カウンターに並んで腰を下ろすと、差し出されたグラスの水を一気に飲みほす


「は~うまい、一気に喉が潤うわ…」

(…すっごい緊迫してたもんね…さっきのゲーム…)


私は、さっきまで目の前で繰り広げられていた、真剣な表情の遼一さんを思いだし、チラッと横目で顔を見やった


「……ん? どうした?」

「あ、いえっ…」

「ふ~ん…」


遼一さんは急いで目を逸らした私の顎を掴み、自分の方を向かせながらグッと顔を近づけた


(ちょ、ち、近いんですけど……!)


あと数ミリで唇が触れる…ところで、背後から聞きなれた声がかけられた




「お楽しみのところを悪いんだが……」


ハッとして目を開けると、目の前にあった遼一さんの顔がどんどん離れていくのが見えた
そして、ゆっくりと振り向くとそこには……

お得意様への挨拶回りを終えた皐月さんが立っていた


「皐月さんか、なんだよ?」

「ふっ、悪いな邪魔したか?」

「………」

「さっきは、見事なゲームだったようだね?」

「…べつに…」


あきらかにふてくされた声で答える遼一さん……

皐月さんは、そんな遼一さんを横目に私の方を見ると、フッと笑みを零し目を細めた


「で? 何だよ?」

「まあ、そんなに怒らないでくれ」
「実は……さっきのゲームを見て、ぜひとも遼一と勝負したいって客がいて…」

「オレと?」

「ああ、せっかくマリアさんと寛いでいるところを悪いんだが……ご指名なんだよ」

「………」
「ふっ、わかったよ……いいぜ、勝負してやるよ」

「助かるよ遼一!」
「日ごろから大変世話になっている人でね、そう無下にも断れなくてね」

「皐月さんにそこまで言われたら、断るなんてできないだろ、なあ、マリア?」

「あ、は、はい!」

「マリアさん、すみません…」
「あ、お礼といってはなんですが、今日は最上階のエグゼクティブスイートをご用意させていただきましたので、ごゆっくりおくつろぎ下さい」

「え、そ、そんな……」
(ここって……スイートでも、すっごい豪華なお部屋なのに、エグゼクティブスイート……って……)


「そうでもしないと、私の気が納まりませんから…」


そう言って皐月さんは胸ポケットからカードキーを取り出すと、私に差し出す
私が受け取るのを躊躇していると、


「せっかくだから、受け取っておきなさいよ」

「遼一さん、でも……」

「皐月さんの好意、無駄にすんなって」


私は頷くと、差し出されたカードキーを受け取った







④につづく…