期間限定ランキングイベント☆白金総司とホワイトデー





              





04:高級菓子店へ




店内には、所狭しと高級菓子が並んでいた


「わぁ……」


入った瞬間、甘い香りが鼻腔を刺激する



「総司さんがスイーツショップに立ち寄るなんて、珍しいですね」

「もうすぐ、ホワイトデーだからな…」

「え……」
(それって、まさか……)



微笑む総司さんにドキリとしながら、ショーケースに並んでいる商品を見る総司さんの隣に並んだ


「お前は、どれがいいと思う?」

「え、そうですね……このマカロンなんかどうですか?」
「…色合いも凄く可愛いし……」

「マカロンか……難しそうだな…」

「え?」

「いや、なんでもない」



呟きながら、総司さんが商品を物色する


(もしかして…誰かへの贈り物なのかな…?)
(仕事相手だとしたら、お返しも大事だろうし……)



自分へのお返しじゃない可能性があることに気づき、少し残念に思いながら、総司さんの隣でいろいろな意見を出してみた


「やっぱり、お前を連れてきてよかった」

「そう言ってもらえて嬉しいです」


店を出る際に、柔らかな笑みでお礼を言われ、少しだけ総司さんの役に立てたような気がして、胸が高鳴っていた





05:手作りをもらうということ




「お前はどんな気持ちで、オレに手作りのチョコをくれたんだ?」

「どうしたんですか、急に…」


帰りの車中、何の前触れもなく総司さんはそんなことを聞いてきた


「女性は…手作りにこだわったりするだろう?」
「逆の立場ならどうなんだろうか…と疑問に思ってな…」

「そうですね……」
「手作りすることって……大切な人のために時間を使うってことだと思います」

「時間を……?」



赤信号で車を止め、総司さんがチラリと視線を向ける



「はい、何を作ろうかな…って考えることから始まって、作ってる間も渡す相手のことを考えるじゃないですか、だから……」


総司さんへの手作りチョコを作った時のことを思いだす



「相手の喜ぶ顔を想像しながら作ったりして……手作りって、そうしてる間にもどんどん気持ちがこもっていくものだと思うんです」

「なるほどな…」
「それで、お前はどうなんだ?」

「え……? どうって……?」

「手作りしたものをもらう、という行為についてだ」
「お前も……手作りのモノをもらったら…嬉しいのか?」



聞きながら、総司さんの射抜くような眼差しが私を捉えた





06:中毒性のある甘さ




「……それは、嬉しいですよ」
「自分への気持ちがこもってるってだけで、凄く幸せだと思います」

「……そうか」



その答えに総司さんが浮かべた笑みは、どことなく安堵したようなもののように思えた


(……こんなこと聞くなんて…どうしたんだろう?)


不思議に思いながら目を瞬かせると、総司さんはハッと何かに気づいたように、再び視線を前に向けた


「気にするな…」
「単にモノを手作りして誰かに渡すことの心理を知りたかっただけだ…」
「…先月のバレンタイン同様、街もイベントムードが漂っていたしな……」

「……はい」

「変なことを聞いて悪かった」

「いえ、全然……大丈夫です」


総司さんにならって視線を前へと戻すと、その瞬間、腿の上に置いていた手をそっと包みこまれた


「あのチョコには…お前の想いがそれほど込められていたんだな…」

「……っ」



そう言われて咄嗟に顔を見上げると、総司さんは不敵な笑みを浮かべたまま運転していた


「あ、当たり前です!」
「あのチョコには、総司さんへの気持ちをた~くさん込めましたから……」


「……そうか、いいことを聞いた」



ニヤリと笑う総司さんにドキドキしていると、車が信号で止まった瞬間、総司さんが助手席の方へと身を乗り出した



「それほど気持ちのこもったものを受け取ったんだ、オレもそれに見合う気持ちを返さないとな?」

「それって……っ!?」


言われるのと同時に、唇に温かいものが触れる


「どおりで、お前の手作りチョコはあんなに甘かったわけだ」
「お前のチョコからは、既製品には感じられない温かな甘みを感じた…」
「……それも、中毒性の甘さだ」

「―――ッ」




バレンタインのことを思い出したのか、不敵な笑みを浮かべると、総司さんは何食わぬ顔で再び運転を始めた







イケない契約結婚
(C)Arithmetic





【③につづく】