④はこちら…★




幸せなトキ⑤



私はなんとなく…遼一さんのその広い背中をジッと見ていた

窓からさす光に晒されて、遼一さんの筋肉質な広い背中や腕に、つい目が奪われる


(……私 あの腕の中に……)

ふと、抱きしめられた感触を思い出して、カーッと頬が熱くなる……

その時に動いた衣擦れの音で、ふいに遼一さんが振り返った


「……なんだ、起きてたのか…?」

「…あ、あの…今起きて……」

「ふ~ん」


遼一さんはタバコを揉み消して立ち上がると、ベッドに戻ってきて
グッと顔を寄せると、私のおでこに自分のおでこをくっつけた


「……熱は、ない……なら、何でそんなに赤くなってんだ?」

「えっ!?」

「お前 顔真っ赤…」

「そ、それは………たぶん……」

「…………」

「…言わなくちゃ…ダメ、ですか……」

「ああ、ぜひ聞かせてもらいたいねえ~」


「……………」
「………さっきのこと…思い出した、から……」

「さっきのこと?」


私は小さく頷いた


「……具体的に…?」

「なっ………そ、そんなこと……言えません!」

「ほお、俺に隠しごとか?」

「べ、別に…そんな!?」


慌てて遼一さんの顔を見上げると、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべていた


(あ……これ、ワザと……知っててワザと聞いてる……)

「………で?」

「………」


私はその問いに、キッと遼一さんを睨むと
遼一さんにギュッと抱きついた

そして胸に顔を埋め……


「……こういうことです!」

と、精一杯の抵抗をした


すぐに私を包み込むように腕が回されると、その腕に力が込められた


「……あっ、ちょ、ちょっと…苦しいですよ……」

「……お前が悪い」

「そ、そんな……」


私は身を捩り……
その腕から逃れようとするけれど、抱きしめるその腕には、
ますます力が込められて……


「……お前は…んっとに……少しおとなしくこうされてなさいよ…」

ふと、優しい声がおりてくる


(…遼一さん………)


遼一さんに抱きしめられたまま…急に固まってしまう


「…いい子だ、これでいい……」


どれくらいそうしていたのだろう……

遼一さんの心臓の音が、トクトクと規則正しく聞こえてくる
その音は私を優しく包み、いつのまにか固まった身体は緊張が解けたように
全身をその腕の中に預けていた


トクトク…トクトク……


その音は、これからもずっと…
私を包み込んでくれる
ここは私だけの場所…

遼一さんの腕に抱きしめられながら、そんなことを思っていると
回された腕が少し緩み、顎を掴まれると正面に遼一さんの顔が覗き込む


「おとなしくなったと思ったら……幸せそうな顔して……」

「……だって」
「遼一さんの腕の中にいると、とっても心地よくて、幸せな気持ちになるから……」

「…マリア………」

「だから、ずっと……んんっ……」
(ずっと、ここに居させてくださいね……)


言葉を言い終わる前に、唇が重なった




トクトク…トクトク……

遼一さんの腕の中で聞いたあの音は……


幸せなトキを刻む音……

幸せなトキを運ぶ音……

幸せなトキを約束する音……



これからんもずっと……

アナタとすごしていく……幸せのトキ………






~fin~






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かなり放置してしまっていましたが……
とりあえず「完」です……

遼一Pが、あまりにも良すぎたため……
なんか、なんとも言えない仕上がりになってしまった感がありますが……


まっ、いいか!!