期間限定★新年パーティー★白金家のお正月
新年早々、白金家の祖父に呼び出されて……?!
年初めは祖父孝行から…?
01:白金家の新年
――新年を迎え数日経った、この日
総司さんと二人で、白金家に新年の挨拶にやってきた
今日は白金家で、毎年恒例の新年パーティーが催されている
「あけましておめでとうございます」
「どうぞ、早く中へ、お祖父さまがお待ちですよ」
「……やはりそうか」
「え?」
「パーティーなんて名目で呼ばれたが、じいさんの本当の目的は…お前だろうな」
「…じいさんは、お前に会いたかっただけだ」
出迎えてくれた人の言葉に、総司さんは一人呆れたようにため息をついた
「…そんなことないと思いますけど?」
(確かによくしてくれるけど……それは孫の総司さんがかわいいからなんじゃ……)
「よく来たな、二人とも」
「さっそくじいさんのお出ましだ……」
総司さんは小声で憎まれ口を叩きながら、私の腰に手を添え、おじい様の方へ向き直った
02:お気に入り
「珍しいですね、出迎えなんて……」
「客人の相手はいいんですか?」
「挨拶はとっくに済ませてあるさ」
「孫とその嫁を出迎えたって、誰も文句は言わないだろう」
おじい様は、総司さんにそうぴしゃりと言い返すと、私に柔らかな笑みを向けてくれた
「久しぶりだねマリアさん、今日はゆっくりしていくといい」
「はい、ありがとうございます」
「総司、荷物を置いたらマリアさんと一緒に、私の部屋へ来なさい」
「分かりました」
それだけ言い残すと、おじい様は長い廊下を再び戻っていった
「やっぱり、お前はじいさんのお気に入りだ」
「あの人が新年から機嫌がいいのは珍しいからな」
「……どうしてですか?」
「毎年この家でやる新年パーティーには、大勢の客が来る」
「その過半数は、コネを作りたがる連中ばかりだ」
「新年早々、そういう人間ばかり相手にするのは、じいさんにとって何よりの苦痛なんだろう」
(やっぱり、大変なことも多いんだ……)
「それより、早く荷物をお気に行こう」
先ほどまでのうんざりしたような表情を消し、口元に笑みをたたえた総司さんが、不意に耳元に唇を寄せた
「この家に入ってから、お前に触れていないな…」
「早く二人きりになって、その唇にキスさせろよ」
「なっ………」
動揺する私の反応まで楽しむように、総司さんは緩やかな笑みを浮かべたまま、廊下を歩き出した
03:妻の晴れ着
「何ですか、これは……」
「何って、晴れ着だよ」
「マリアさんに似合うと思ったんだが、どうかね?」
「こんな素敵な着物を……私に、ですか?」
おじい様の部屋に通されると、晴れ着が飾られていた
それは、一目見ただけでとても良質な着物だと分かるほどだった
「私の妻のものだったのだが……」
「マリアさんは、こんな古くさい物は嫌かい?」
「そんなことありません!」
「とても素敵な着物で、私が着てもいいのかと……」
「いいんじゃないか?」
美しい着物を前に恐縮していると、私の肩に総司さんがそっと手を添えた
「お前に着てほしいと言ってるんだから、遠慮することはない」
「お前が着なければ、いつまでもタンスの肥やしになっているだけの着物だ」
「着てくれる人間がいるなら、祖母も喜ぶ」
「総司さん……」
「あくまで、お前が嫌でなければ…の話だがな」
「嫌だなんて…そんな……!」
「……お言葉に甘えさせていただきます」
「ああ、そうしてくれ」
私の返事に、おじい様は心底嬉しそうに顔をほころばせた
04:格別の魅力
「…できたか? 入るぞ」
「ちょっと、待っ……」
言い終える前に襖が開け放たれ、私を見た総司さんがピタリと動きを止める
「………」
(何も言ってくれないけどもしかして…似合ってない…?)
「総司さん、あ、あの………っ」
総司さんの指先が頬に伸びてきて、言いかけた言葉を思わず呑み込んだ
指の背で頬を撫でつける総司さんの瞳は、まるで眩しいものを見るかのように細められている
「あ、の……」
「……驚いたな」
「祖母がこの着物を着ている姿は何度か写真で見たことがあるが……」
「総司さん……?」
頬を撫でていた手が、首筋をつたって下りていく指先の動きに、思わず体が小さく震える
「あっ……」
「見慣れているはずなのに、お前が着ると格別魅力的に見える」
「今すぐここでお前をオレのものにしたくなるくらいにな…」
「なっ……何言ってるんですか?」
「……俺が冗談を言っているように見えるか?」
「お前を前にして言う俺の言葉は、いつだって偽りなどない」
身体を引き寄せるように、力強い腕に腰を抱かれ、二人の間にあった距離がなくなる
(そ、総司さん、もしかして…本気!?)
いつものように余裕の笑みを浮かべる総司さんに見下ろされ、何も言えずに、瞳を見つめ返すことしかできなかった
05:2人の時間
「お前、いつの間にオレを煽るのがそんなにうまくなったんだ?」
「そんなつもりじゃ……」
「そうやってお前に見つめられるだけで、俺の抑えが利かなくなることくらい、お前だって知っているだろう?」
「!!」
顎に手をかけられ上を向かされると、射抜くような総司さんの眼差しに捉えられる
「総司さん……」
「随分と簡単に従順になるんだな」
自分の背中に私の腕が回ったことを確認すると、総司さんはクスッと小さく笑みをこぼした
「そうして俺だけに、心も体も開くお前は、なかなかそそられる」
「やはり、実家になんて来ている場合じゃなかったかもしれないな」
うなじを軽く撫で上げながら、総司さんの唇が迫る
頬を吐息にくすぐられたかと思うと、すぐに私の大好きな温もりが、唇に触れた
「ん……」
「……あまり声を漏らすなよ?」
「今日は人の出入りが多い」
「客人ごときに、お前のその声を聞かせてやるのはもったいないからな…」
そう言って不敵に笑うと、総司さんは声さえも奪うほど深く唇を重ねた
「……ん……っ」
「足りないのか?」
絶え絶えになる吐息をもう一度キスで奪い、総司さんの手が着物の袷からそっと忍び込もうとした、その時――
「総司、取り込み中悪いけど、じいさんが呼んでる」
「!?」
「………」
部屋の外から、聞き覚えのある声が総司さんを呼んだ
≪②につづく≫
イケない契約結婚
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