†マリアの部屋†-noname~10.jpg



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有馬志信とハロウィンパーティー






01:いつもと違う顔




家に帰ってくると、志信さんの部下の人たちが忙しそうに廊下を走り回っていた

誰かに聞こうとするけれど、なんとなく声がかけづらい



「マリア、考え事か?」


「志信さん!?」



私の背後から現れた志信さんは、仕事から帰ってきたばかりらしくスーツを着ていた

仕事で疲れているのか、その表情はどこか冴えない



「志信さん、お帰りなさい」


「ん、ああ…またすぐに戻らなきゃなんねぇから、先に寝てていいぞ」


「夕ご飯はどうしますか?」


「そうだな……そのぐらいの時間ならあるな」


「じゃあ、急いで準備しますね!」


「ああ」



どこかホッとしたようにため息をつくと、志信さんが私の頬にそっと触れる

その手が顎をそっと上へあげ、志信さんが顔を近づけ―――


もう少しで唇が触れるという時、突然志信さんの部下が慌てて駆け寄ってきた



「た、大変です! 社長!!」





02:歓迎できない客





「なんだ? 騒がしい…」


「そ、それが……」



言いづらそうに言葉を濁した部下の後方から………



「…今日はいつになく騒がしいな」


「アンタは……」


(なんで神山さんが…?)



薄ら笑みを浮かべた神山さんを、志信さんが睨みつける




「相変わらず、一緒にいるのか…」

「お前のことだから…そろそろ別の女にでも手を出していると思っていたが……」


「そんなくだらないことを確かめにきたのか?」

「悪いが、こう見えても俺は忙しいんだ、さっさと帰ってくれ!」


「そうか、それはちょうどいい」

「私が用があるのは、お前でなく彼女だからな」


「…私、ですか?」


「どこか落ち着いた所で話がしたいんだが…」


「ふざけるな!そんな真似させられると思うのか」


「志信さん…」

(でも…今さら…私に何の用だろう…?) 




そのまましばらく二人は対峙したままだったが、先に折れたのは神山さんの方だった




「しょうがない、また日を改めるとしよう…」


「何度来ても答えは同じだ!」

「マリアに手は出させねぇからな」


「なにか勘違いをしているようだから言っとくが、これは彼女の為の話だ」


「あんたがそんな話をするとは思えない、さっさと帰れ!」


(私の……ため?)



やれやれと神山さんはため息を吐くと、退散していった





03:黒塗りの車




あれから何事もないまま、数日が過ぎていた

けれど、あの時の神山さんの言葉が、妙に引っかかっていた



(…私に用事って…何だったんだろう?)


「はぁ~」



あのあとは志信さんの機嫌が悪くて大変だった…

神山さんが何か仕掛けてくるんじゃないかと、志信さんは気が気じゃないと言っていたけど…



(…こんなことばっかり考えててもダメだよね…)



色々と考えてもしょうがないと割り切って会社を出た



会社の入り口を出ると、黒い車が止まっているのが妙に目についた




「こんなところに車が止まってるなんて珍しい…」


「ああ、やっと出て来た、か…」


「神山さん!? どうしてここに…?」


「この間言ってた通り、君に話があってね」

「これから少し時間をもらおうか」



表面上は好意的な話方だけど、どことなく漂う威圧的な雰囲気に、ただ頷くしかなかった





04:証拠写真!?





連れて来られた場所は、落ち着いた雰囲気のカフェだった

どこに連れて行かれるか、少し緊張していたけれど、意外と普通の場所でなんだか拍子抜けしてしまった



「あの……私に用って何ですか?」


「まずはこれを見てくれ」



そう言って茶封筒をテーブルの上に出し、こちらへ押しやった



言われるままに中身を確認すると、

志信さんと見知らぬ女性が親しそうに歩いている写真が何枚も入っていた




「ここ1ヶ月ぐらいの、アイツの素行調査をしたものだ」

「どうやら、写真に写っている女性と付き合っているようだ」


「・・・え?」



写真の女性を指差し、神山さんが言う

一瞬、何を言われているのかさえ理解できずに、固まってしまう


私の顔をチラリと一瞥すると神山さんは、さらに言葉を続ける



「これが、アイツが最近忙しそうにして、家にもあまり戻っていない理由だよ」

「こんな男の傍にいる必要はないだろう?」


「志信さんがそんな事するわけ……」


「…人は変わるものだ…」



「勝手に決め付けてんじゃねぇ~!」






05:焦燥と余裕の笑み





響いた声は、私が良く知っている人のものだった…

視線を上げると、志信さんが立っていた




「意外と早い登場だな…」


「沢渡ってヤツから、マリアが変な車に連れて行かれたって、連絡があったからな」


「志信さん…」


「マリア、帰るぞ」




腕を掴まれて、慌ただしくたち上がる


神山さんはゆったりと椅子に腰を掛けたまま、私達が帰っていくのを黙って見ていた



「志信さん…!」

「忙しいのに、来てくれてありがとうございます」


「……あの写真のこと、聞かないのか?」

「……見たんだろ?」



どこか苦々しい表情の志信さんに問われ、正直に頷く

それを確認すると、志信さんは急に立ち止まった



「あの女と一緒にいたのは本当だ」

「だが、そういう関係じゃない」

「それに……」

「…はあ……しょうがねぇな…とりあえずついて来い」



「え?」








≪②につづく≫