「眠らぬ街のシンデレラ」(妄想小説)



冷たい雨のふる夜に…⑤END:2 廣瀬遼一





~マリアside~




≪ツーッ――ツーッ――ツーッ――≫



無機質な音だけが聞こえている



(しょうがないんだよね?今この状況で言葉にしたら……)

(……余計辛くなるだけなんだから…)



なんとか納得させようと、自分の気持ちに言い聞かせる



「でも……」

「ああ~~、やっぱりダメ!」


(たとえ今は会えなくても、会えないんだって解ってても……)

(この気持ちだけは、伝えよう…そうじゃないと……)



私は握りしめた携帯の、リダイヤルボタンを押した






~遼一sideマリアside~




≪~♪~~♪~~~♪≫




「マリ…ア…?」


「遼一さん!あ、あの…言い忘れたことがあって…」


「…どうした?」

(言い忘れたって…?)



少しビックリしたような遼一さんの声…が聞こえた



「私……遼一さんに会いたいです!」

「本当は……電話だけじゃなくて、声だけじゃなくて……」

「遼一さんに……今すぐ会いたいんです!」



「………」

(マリア…お前は……)



少しの沈黙が続く



「…あ、あの…ごめんなさい、い、今こんなこと言ったら…」

(勢いで言っちゃったけど、やっぱり…困ってるよね?)


「迷惑だって解ってるし…私のわがままだってことも、解って……る…」

(お願い、何とか言って…)



「…マリア、謝るなよ」

「お前が謝ったら、オレも謝らなきゃなんなくなるでしょうが…」



「え……?」

(ど、どうして遼一さんが…?)



「オレも…今すぐにお前を抱きしめたい…どうしようもないくらいにな…」

(あ~言っちまった…マリアには敵わないな……)



「遼一さん…」

(本当に…!?)



「マリア、我慢しなくってもいい……」

「迷惑でもいい、わがままでもいい……いや、こんなわがままは、かえって嬉しいけどな…」


「う、うっ…うん…っ、うっうっ…」



(ん?泣いてるのか?)


「おい、泣くなよ バカ…」

「仕事放り出して、今すぐに抱きしめたくなる…」



「だ、ダメですっ! うっ…うっ…」


「じゃ、泣くなよ…」


「は、はい…うっ…くっ、泣きません…うっ…」




だけど、溢れ出る涙は止まらない



「最初は…ただ声が聞きたくなって…声を聞くだけでいいって思って…」

「でも…声を聞いたら、会いたくなって…どうしようもなくなって…」

「…でも、会いたいって言ったら……辛くなると思って…」



堰を切ったように、我慢していた想いが次々と溢れてくる



「………」

(マリア、オレはお前がいないと、傍にいないと…)

(……限界だな…)



そんなマリアの想いを聞きながら、ある言葉が脳裏に浮かぶ



(…一緒に暮らさないか)



それは、オレの中から自然に溢れ出た想いの言葉だった



「なあ、マリア……」



オレはハッと、言いかけた言葉を飲み込んだ



「………?」

(な、なに?)


「仕事落ち着いたら…たっぷり苛めてやるから、覚悟しときなさい」

(一生苛めてやるからな…)


「…ど、どうしてそうなるんですか?」

(さっきまで、優しかったのに…)


「ハハ、お前を苛めることがオレの楽しみでしょうが」

(いや、これからは生きがいか…)


「も、もう……知らないっ!」

(…お手柔らかにお願いします)



私たちは、いつの間にか楽しそうに笑いあっていた



「じゃ、楽しみにしてなさいよ」


「優しくされることを、ですよね?」


「ああ、優しく苛められることをな!」


「もう!」


「じゃあな」





≪ツーッ――ツーッ――ツーッ――≫





無機質な音が聞こえている


でも、その音でさえ、さっきまでとは違う優しい音に聞こえ、

私を穏やかな気持ちにしていく


その音は、いつしか雨の音にかき消され…

言葉にはできない、遼一さんへの溢れ出る想いを

絡みとっていく……


その想いを雨音が、届けてくれるかのように……



窓の外には…


冷たい雨が降り続いていた…


そんな冷たい雨の降る夜は、想いあう二人の距離を確実に縮めていった……







~fin~










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m(_ _ )m


END:2 終了しました~!



本当はEND:1だけで、このお話は終了予定でしたが……


最後まで、どっちのENDにするか迷いに迷い…

決められず……


「会いたい」この言葉を言うか、言わないか…

伝えるか、伝えないか…で、最後まで悩んだんですよね。


最初は言わないまま…がいいのかな~って、

(私ならそうなので…)



でも、だんだん…言うのも有なのかな~って、


こっちのマリアちゃんは…

私とはまるっきりの正反対で・・・


素直に自分を出せるマリアちゃんが羨ましくて…

こんな可愛いこと言えることが、羨ましくて…


ありえない自分とのギャップを妄想で書いてみました!



皆さんは、どちらのタイプですか?

どちらのENDが好みでしょうかね~?




予想以上に長いお話となってしまいましたが、

長らくお付合いいただきまして、ありがとうございました!



今日も、こちらは一日中雨降りです……

寒くなってきましたので、風邪にはお気をつけくださいませ。