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白金総司と「お月見!」
06:伸びる影
家への帰り道で、ススキを買うのをすっかり忘れていたことに気が付き、
急いで商店街の方へと戻っていた
「おっと…」
「きゃっ!」
慌てていたため、急いで曲がった角で誰かにぶつかってしまい、転ぶっ、と思った瞬間、
ぶつかった相手に抱きしめられる形で、転ぶのを免れた
「ふふ、まさかマリアさんの方から、飛び込んでくるとはね、驚いたよ」
「ま、真澄さん!?」
「ずいぶんと急いでいたようだけど、何かあったの?」
「いえ、ススキを買い忘れてしまったから……買いに行こうかと」
「今からじゃ、花屋はもう開いてないだろう、よければ俺の家にあるのを分けてあげようか?」
「え、いいんですか?」
「ああ、別にたくさんあるし……」
「そのかわり、一緒に家まで付いてきてくれるなら、だけど…?」
「家まで…ですか?」
「どうする?」
07:影の罠
ススキを分けて貰ったらすぐに帰れば大丈夫だろうと思い、真澄さんと一緒にタクシーに乗り込んだ
ふと窓の外を見ると、タクシーはどんどん郊外の方へ向かっている事に気付いた
「真澄さん、どこに向かっているんですか?」
「言っただろう、俺の家って……でも、別荘の方だから、結構かかるけどしょうがないよね」
「別荘!?」
「せっかくだから、泊まっていくといいよ」
「ふふ大丈夫だよ、タクシーに乗る前に、ちゃんと総司には知らせてあるから…」
「そ、そんな!」
「ほら、もうすぐ高速に乗るから観念してね」
「あ、見てよ、雲が晴れて満月になりつつある月が綺麗だよ」
わざとらしく笑みを浮かべた真澄さんが、空に浮かぶ月を指差す
「そんな顔してないでさ、……どうせ総司は明日は家に帰って来れないんだし、
俺と二人で楽しもうよ」
「総司さんが帰れないってどういうことですか?」
「大事な商談が遠方であったはずだから、どんなに頑張っても間に合わないだろうしね」
「そ、そんなこはずは……総司さんはちゃんと約束してくれましたから」
道路のカーブで自然と身体が傾いた私を、真澄さんが支える様に抱きしめる
抗おうともがくけれど、その抵抗も空しくより強く抱きしめられてしまった
08:逃げ場もなく
「真澄さん!」
「もうすぐ別荘だよ」
「総司の変わりじゃ不満だけど、俺が一緒に月見をしてあげるよ」
09:頬を汗が伝う
気付くと私は畳のある座敷に倒され、真澄さんに馬乗りにされていて、
両腕が真澄さんの片腕で押しつけられていた
「俺は、アイツから、社長の椅子以外も奪ってやる」
「今から俺に、鞍替えしないか?」
「総司さん!助けて!」
「…っち、それが返事か……まぁ、いい」
「どーせ誰も来ないんだから、叫んだって無駄だよ」
「総司さんっ!!」
「マリア!!!」
次の瞬間、私の上に馬乗りになっていた真澄さんが、床に叩きつけられて……
私の目に映ったのは、間違いなく総司さんの姿だった
総司さんは息を切らして、汗が頬を伝っている
「マリア、無事か!」
「総司さん!!」
「っつ、いって~」
「お前はおとなしくして貰おうか」
「有馬さんまで…」
「まったく、お前は……」
総司さんの温もりに抱かれて、そのまま連れて行かれる
別荘の外には、ライトが点けっ放しの車が乗り捨ててあった
「アイツはどうするんだ?」
「ほっとけ、どうせ警察に引き渡してもすぐに出てくる」
「総司さん……有馬さん……」
「マリア、帰ったらお仕置きだからな……」
10:信じてほしい
家への帰り道、有馬さんがここに来るまでの事を簡単に話してくれた
有馬さんは今日の帰り、ずっと私を見守ってくれていたらしい
それで、真澄さんとタクシーに乗った時に、総司さんに連絡を入れて、
ここまで助けに来てくれた
リビングのカーテンの隙間から、青白い月が微かに見える
「お月見、できなくなっちゃいましたね」
「もう、それどころじゃないだろう」
「……総司さんの仕事にまで迷惑をかけてしまって、ごめんなさい」
「そんな事よりも、お前は真澄の所へ行くつもりか?」
「え?」
「お前から真澄に抱きついている画像が送られてきた……」
「……お前は、真澄が好きなのか?」
「ち、違います!」
「じゃあ、これは……なんなんだ?」
総司さんの携帯に、私と真澄さんが抱き合ってる姿が映しだされている
「こ、これは、私が転びそうになったところを支えられた時のと、
カーブで身体が傾いたせいでこうなっただけです!」
「………」
「私が好きなのは、総司さんです、……わかってるくせに…・・・」
「……マリア」
≪ノーマルエンドへつづく≫
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
うっ!なんか、話の展開が早すぎて……
あっという間に、次の場面みたいな……
それにしても……
マリアちゃん!あなた簡単に人を信じすぎでしょ!?
どうして、簡単に真澄になんかついてっちゃうわけ??
もうちょっと、警戒しなさい!
は~総司さんも大変だ…
た~っぷりお仕置きお願いしますっ!