続編☆白金総司


第9話:心は潰えない④






「この後の予定ですが、Aホテルで商談があります」


「わかった、その間に……」


「はい、分かっています」

「……それはそうと、総司さん、健康診断、そろそろ受けないとまずいんじゃないですか?」


「………」


「総司さんはなかなか予定がつかなくて行けませんでしたが、来週の火曜日、午前中だけ秋があるんです、そこでなんとか先生に時間を捻出してもらって……」


「……そうだな、それはお前に任せるよ」



総司さんは微笑んで、私の頭にポンと手を置いた



「……ふふ」


「…なんだ、いきなり笑い出して」


「幸せだな、って思っただけですよ」



総司さんは不思議そうな顔をしているけれど、こうやって仕事でも一緒にいられるなんてとても幸せで……「お前に任せる」、その言葉を掛けてもらえたのは、自分で思っていたよりもずっと嬉しかった



「この後も、まだまだ予定が詰まってます」

「昨日の会議の続きに、その後は……」


「パーティー、だったな」


「はい」


「……お前も、出席するんだからな」




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①もちろん秘書として



「もちろん秘書として、精一杯お供を努めさせていただきます」


そう言うと、総司さんはあからさまなほど、顔を歪めた

呆れたように額を押さえ、左右に頭を振る


「だから、何度も言わせるな、…ちゃんと妻として……」




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②もちろん妻として(5up)



「もちろん、白金総司の妻として」


総司さんは一瞬、驚いたように片眉を上げた

それから、


「ああ、頼むぞマリア」


にっこりと微笑んだ




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③えっ!?



「えっ!?」


「えっ、とはなんだ……」

「むしろ、それは俺のせりふだぞ」


「私も、ですか?」


「お前は俺の妻だ、出席するのは当たり前だろう」




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「いたいた」


「坂部部長?」


後ろから声がして振り返ると、総務部の坂部部長が、咥えタバコでこちらに向かって歩いてきていた


「どうかされましたか?」


「あー、敬語とか使ってくれなさんな……一応、あんたが上司なんだ」


そう言い、崩れた敬語とも呼べない語り口で、総司さんに話しかけている



「これ」

「他の奴らに見られちゃ、まずいだろうと思ってな」


「……真澄のやつから毟り取ってきた」



差し出された複数の写真

それは、総司さんのあのスクープ写真だった



「……わざわざ、すみません」

「以後このような事はないようにしますので…」


「そうしてくれ」

「あ、そうだ、警備員が連れてきた男だが、真澄が金で雇ったチンピラだった」

「…だから、下手に恐れることはない」



そう言って、ヒラリと手を掲げて去って行こうとするのを、総司さんは引き止めた




「誰から連絡があったんだ?」


「誰から?」

「ああ、真澄がうろついてるって連絡をよこしたヤツか?」


(そうだ、誰が連絡したんだろう……)



誰かから連絡でも来ない限り、あんな場所に現れないはずだ


たまたま真澄さんを見つけるとは考えづらい

それに坂部部長は、「…聞いて駆けつけてみたら」、と言っていた



「あー、誰だったかな……」


「それが、重要なんだが」


「別に誰でもいいだろうよ、怪我一つなく五体満足で今たってんだから…」


「………」


「…睨むなって」

「……そうだな、でも聞いた事のある声だったな」


「聞いた事のある……」


「ただ、記憶に無いってことは、総務部以外の奴らだな」

「真澄がこっちに転属してきたことを知ってる白金の連中か、役職持ってる上層部の奴ら位しか、俺は思い浮かばねぇけど……」



坂部部長はあくびをすると、ガシガシと後頭部を掻きながら踵を返した



「待て、ここは禁煙だ」


「………」

「んな固いこと、言うなって」



ニッと不適な笑みを浮かべると、坂部部長は当てつけのように、タバコを持った手でヒラリと手を振った










≪つづく≫






「イケない契約結婚」


白金総司(続編)



(C)Arithmetic







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~ちょこっと感想~




坂部総務部長!グッジョブ!!


いや~、突然出てきた坂部総務部長ですが…


清潔感のある短髪に顎鬚、それに咥えタバコ……

ん~~ちょっとイメージわかないな~~~


ボサボサ髪に無精ひげ、それに咥えタバコ……

こっちの方が、ワイルド感があって、イメージ通りなんだけどな。



でも、どっちにしても、あの真澄を―――ホントGJです!


これからも、ちょこちょこ出てきて、真澄をとっちめてやっておくんなせい!