続編☆白金総司
第7話:差し伸べられる手②
総司さんは早急に手続きを進め、真澄さんを PLATINUM の社長から降ろした
そして本社の、白金の名に怯まない強者達が在籍する総務部へと、異動させたのだった
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「俺は副社長を社長へ推薦しているわけだが、本人の了承が得られない」
「そのため適任者がみつかるまでは、俺が社長代理として再びこの席を預かろう」
「異論のある者は?」
PLATINUM の社長室―――
社長秘書の香坂さんや、役職についている社員を集め、総司さんは真澄さんが社長から外れ、自分が再びこの席につく事を伝えた
「………」
役員たちの様子を見る限り、みんな、総司さんの復帰を喜んでいるようだった
けれど、私はあまりそのことを歓迎できなかった
(今以上に……もっと忙しくなるんだ……)
たった一つの会社を抱えていただけで、あれほど忙しかったのだ
会長としての責務を果たしながら、PLATINUM の社長の座につくなんて……
「だが……白金グループ会長との兼任は容易なものではない」
「だからこそ、ほとんどの権限を副社長に委譲する形で任せたい」
「…負担はあるかもしれないが、適材を見つけるまでの辛抱だと思ってほしい」
「だが、全ての責任は最高責任者の俺が負う」
「各自、自分の裁量で仕事をしてくれ」
「……頼りにしている」
『はい、会長!』
その場にいた役員たちが、いっせいに声をあげた
× × × ×
「お疲れ」
荷物を置いて一息つく間もなく、業務を再開する私に総司さんが声をかけてくれた
「総司さんこそ、お疲れ様です」
あれからすぐに本社に戻る事はできず、様々な業務の折り合いをつけてから戻ってきたのだった
真澄さんは、あんな事をしていながらも、課せられた仕事はきちんとこなしていたようで…
総司さんはそれを見て、もったいないと零していた
「あの…」
「なんだ?」
ここにきて、ずっと私の中でくすぶっていたことを切り出してみることにした
「PLATINUM の社内に、彼女のポスターがありました」
「CMも、社内モニターで見ました」
「……やっぱり、嘘じゃなかったんですね…」
「ああ…そんな顔するな」
総司さんは、嘘なんかついていなかった
そう認識すると、ホッとしたのと同時に胸が締め付けられた
総司さんが私の頬に手を伸ばす
「……っ」
頬に指が触れた瞬間、私は総司さんの胸に縋りつくように抱きついた
「……困った秘書だな」
私をしっかりと受け止めた総司さんは、そう言って困ったように笑い、背中に腕を回すと、ギュッと力をこめて抱きしめてくれた
「…2回も勝手に勘違いして、本当にお前は……」
「だって……総司さんだって悪いんです……」
少しだけ体を離して視線だけで総司さんを見ると、彼の指にそっと上を向かされた
「…そうだな、確かに今回は、俺が悪いと思う」
「…本当です」
「ああ」
「ひどいです……」
「最低です……」
「……そこまで言うのか」
総司さんが指で私の鼻先に触れる
「でも…いくらなんでも、花代と二人きりになる事はないだろう?」
「え?」
総司さんは、私の腰に腕を回すと、子供にするように片腕に私を抱きかかえた
「いえ、あの……あれは偶然で……」
「わかってる…」
「偶然だとしても、わかるだろ? お前が俺に抱いた気持ちを思い出せ……」
「……同じように感じるんだよ」
「……俺だって……」
(そうなんだ……)
眉を寄せた総司さんを見て、やっと安心できた気がした
彼もそう思ってくれていたなんて……
「私…だけじゃないんですね……?」
「私だけが…一方的に総司さんのことをすきなわけじゃ……」
「何を言ってるんだ、お前は…」
総司さんは、抱き上げた私をまっすぐに見上げた
「そんなわけないだろう?」
「……っ」
抱きかかえられているせいで、嬉しさを表すように、彼の頭に抱きつくような体勢になると、総司さんが顔を背けた
どうしたのかと顔を見ると、眉間にシワが寄っていた
≪つづく≫
「イケない契約結婚」
白金総司(続編)
(c)Arithmeric