続編☆白金総司
第5話:旧知の仲⑥
「今日は PLATINUM に行くんですよね」
「ああ」
「私は残って定時まで仕事をしますね」
「その後、友達と飲み会……だったか?」
「はい」
「…総司さんが大丈夫って言ってくれたから、予定を入れちゃったんですけど…」
「本当に、大丈夫でしたか?」
少しだけ不安になって総司さんに問いかけると、
「ああ、楽しんでこい」
総司さんは首を縦に振った
「総司さんも、気をつけて行ってきてくださいね」
「こっちはただの報告会みたいなものだから、大丈夫だ」
「……じゃあ、行ってくる」
総司さんは優しく微笑んで、会長室を出て行った
「もうそろそろ、仕事終わらせないと…」
ちょうど区切りをつけようとしたところに、総司さんから電話がかかってきた
「もしもし」
『マリアか、オレだ』
「はい、お疲れ様です」
『今日の夜、直帰できたはずが……』
「できなくなってしまったんですか?」
『ああ、帰りが少し遅くなる』
『まあ、普通に仕事をして帰るよりは早いだろうが…』
「私、行かなくて大丈夫ですか?」
『ああ、こっちもちょっとした付き合いだから大丈夫だよ』
『是非とせがまれてな…』
「ふふ、総司さんは前社長でしたもんね」
『ああ』
『だからお前も、気にせずに楽しんでこい』
「わかりました」
「総司さん、飲みすぎたらダメですよ」
『お前もな』
『じゃあ、切るぞ』
「はい」
× × × ×
「久しぶり! マリア!」
「久しぶり~うわ~~なんか綺麗になっちゃって!」
「人妻になったからなのかな~?」
「しかも、あの白金グループの会長婦人だもんね~」
「もーうらやましい!」
「そ、そんなことはいいから…早く行こ!」
「さすが白金婦人、余裕ですな~」
「そ、そういうんじゃないってば……もう!」
久しぶりに再会した友人たちと3人で並んで歩きながら、予約したお店へと向った
お店に入ってお酒を飲み、ふう~、と一息ついたところで脇腹をつつかれた
「な、何?」
「いいなー、玉の輿……」
まだそんなに酔っ払っていないとは思うものの、高いテンションで腕へ抱きつかれた
「しかも、白金総司だよ? あの白金総司!!」
「……私、結婚するまで知らなかったんだけど、そんなに有名?」
「なに言ってんの! 白金グループの次期会長筆頭候補、しかも美形!」
「それでいて、結構な有名企業の若社長!…テレビとかも出てたんだから…」
「そうなんだ……全然知らなかった……」
彼女たちはジーっと私の顔を見てから、ゴクゴクとお酒を煽った
「ま、既婚者は余裕でいいよね~」
「いろいろなお偉いさんと、顔見知りなんでしょ?」
「良かったら今度紹介してよ!」
「いや、そんなに知り合いいないし……」
「それに、結構大変なんだかよ、社長婦人って…」
「彼はとにかく忙しいから家にいないし、サポートしないといけないし……」
「はいはい、ノロケ、ノロケ」
「やだやだ、これだから人妻は…」
私たちは顔を見合わせて思いっきり笑う――
彼女たちとそんな他愛のない話をしながら…楽しい時間が過ぎる
でも、私は頭の隅で、総司さんのことがずっと気になっていた……
× × × ×
彼女たちとは利用駅も違ったため、お店を出るとすぐに別れた
(…少し、飲みすぎたかな……)
久しぶりに会ったから、ちょっと調子に乗ってしまったかもしれない
無事に何事もなく家に帰りつけるか、ちょとだけ不安だ
そう思った矢先、聞き覚えのある名前が、耳に聞こえてきた
「白金さんって、相変わらずカッコいいですねぇ!」
「………?」
”白金”という名前が気になり振り返る
(!?)
「……酔ったんじゃなかったんですか?」
「ふふ、外に出たら醒めちゃいましたぁ!」
「じゃあ、中に……」
女性が、グイっと総司さんの腕を引っ張って、その腕の中に飛び込んだ
(あの人……)
確か、総司さんと一緒に写真に写っていたモデルだ…
「……そ、総司、さん?」
恐る恐る声をかけると、総司さんが勢いよく振り向いた
「マリア!」
「だれ?」
総司さんがとっさに彼女を自分の腕の中から引き離そうとすると、彼女の方からさっと身を引いた
「…お前も…まさかここで飲んでいたとはな」
「……ん? 少し顔が赤いんじゃないのか?」
総司さんが私の頬へそっと伸ばした手を、私は思わず、バシッと振り払っていた
≪第6話へつづく≫